「あの家、昼間からカーテン閉めっぱなしで怪しい」に頷いた私が、輪の中で初めて言い返した日
ゴミ捨て場の輪で、私はうなずいてしまいました
「あの家、昼間からカーテン閉めっぱなしで怪しい」
そう口火を切ったのは、角の家の年上の女性でした。この住宅街ではゴミ出しのついでに立ち話が始まるのが習わしで、私も越してきてから輪に加わるようになっていました。向かいの家には、少し年上に見える女性が1人で住んでいます。挨拶は返してくれますが、それ以上の会話をしたことはありませんでした。
「うちからも、開いているところを見たことがないです」
自分の口から出た相づちに、輪の何人かが笑いました。その時、向かいの家の玄関がわずかに開き、すぐに閉まりました。私は袋を持ち直して、聞こえていないことにしました。
電柱に、探し猫の張り紙が増えました
数日後、角の家の女性の猫が窓から出たまま戻らなくなりました。電柱に張り紙が貼られ、立ち話の話題はその猫一色になりました。
「猫がいなくなったのと、あの家に箱が届いてるの、重なってない?」
誰かがそう言い、輪の空気が変わりました。根拠のない話だと私も分かっていましたが、否定はしませんでした。向かいの玄関先には、大きな箱がいくつも置かれたままでした。
回覧板の紙のあとに、もう一言が続きました
その週に回ってきた回覧板には、印刷された紙が1枚挟まれていました。庭に迷い込んだ首輪の猫を保護していること、飼い主を探していること、人に慣れていない保護猫を預かっているため、道路側の窓を開けず、カーテンも閉めていること。書き手は、向かいの家の人でした。
回覧板が一周したあとの次のゴミ出しで、その紙の話になりました。角の家の女性が、声を落としました。
「うちの子、あの人が預かってくれてたの」
紙が角の家まで回った日に、猫はすでに引き取られていたそうです。誰も続きを引き取らないまま、袋を持つ手だけが動きました。そこで、角の家の女性がぽつりと言いました。
「でも、最初から言ってくれれば疑わなかったのにね」
前の私なら、黙っていたと思います。
「それは違うと思います」
自分でも驚くくらい、声はすぐに出ました。
「知らなかったことと、勝手に疑ったことは別ですよ」
輪の誰とも目が合わないまま、その日の立ち話は終わりました。
そして...
その足で、私はいちばん行きづらい家の呼び鈴を押しました。出てきた女性に、自分が言った言葉だけでなく、猫の話を聞いても否定しなかったことまで伝えて、頭を下げました。
「外の人影や車が見えると、まだ人に慣れていない子が怯えるんです」
奥の部屋のドアは閉まったままでした。
「猫のことは説明します。でも、普段から近所と付き合うつもりはありません」
その言葉を聞いて、私の口から出たのは、謝りに来たはずなのにこんな本音でした。
「誤解されたくないなら、もう少し話してくれてもよかったんじゃないですか」
「話さないことと、勝手に怪しい人にされることは別ですよね」
私は最後まで頷けたわけではありません。ただ、さっき私が角の家の女性に言ったことを、今度は自分が言われていました。
それ以来、立ち話で誰かの家の話が出ると、本人に聞いたのかを先に確かめるようになりました。向かいの家との距離は、今も挨拶のままです。
(30代女性・パート勤務)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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