文にすると足りない気がして、園の門まで持ち越していた半年ぶんの返事
送れているのは挨拶までです
娘と同じ組のお母さんと連絡先を交換してから、私が返せていたのは短い挨拶だけでした。娘さんの話が届いても、その内容には触れず、「おはようございます。今日は雨になるみたいですね」と返していました。天気の部分が入れ替わるだけで、あとは同じ形です。向こうからは、「娘が縄跳びを飛べるようになりました」と、その日の出来事が届きます。私は読むのを楽しみにしていましたが、返事を文章にするところで時間がかかっていました。読んだあとで、私は買い物メモの裏に要点を書き写します。園で会ったときに聞くためです。書き写した紙は、財布と一緒に持ち歩いていました。列に並んでいる間に裏返して、上から順に聞いていきます。
会ったときに言えばいいと思っていました
文を打つのが遅いのは前からです。返そうとすると、書いては読み返して、直して、また読み返します。書き上がるころには送り迎えの時間になり、口で言えば10秒で済むことに30分かけている自分が嫌になって、画面を閉じました。それが半年続きました。門の前でなら、いくらでも話せます。「縄跳び、続けて何回まで飛べたんですか」と聞けば、そこから列が動くまで話が続きます。会ったときに続きを聞けているのだから、メッセージでは挨拶だけ返せばいい。そう決めたのは私です。直そうと思ったことは何度かありました。直さないほうが楽でした。
2日、何も届きませんでした
ある日から、長い文が来なくなりました。1日目は、忙しいのだろうと思いました。2日目になっても、向こうからは何も届きませんでした。書き写すことのない日が続くと、門の前で聞くことも減ります。話が短くなって、私は自分のしてきたことに気づきました。挨拶しか返さない相手に、長い文を送り続ける理由はありません。打ち直しをやめて、「昨日と今日は、何も届いていませんね」とだけ送りました。返事には「長い文が重かったのだと思って、控えていました」とありました。重いと思ったことは一度もありません。重かったのは、返せない私のほうです。送っていた挨拶は、私の中では続きのある文でした。続きは全部、門の前に置いたままにしていました。
そして...
私は「文にすると足りない気がして、会ったときに聞こうと思っていました」と打ちました。ここまで書くのに半年かかった1行です。迎えの列で、買い物メモの裏を見せました。日付と、聞きそびれた話が並んでいます。昨日は、門で聞くつもりだったことを、その場で打って送りました。文が短くならないうちに、送信を押しました。
(20代女性・主婦)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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