妻の愚痴に毎回「直し方」を返していた僕、「それ、自分でやったことある?」に答えられなかった理由
失敗するたび、「次はこうする」と残していました
以前の職場にいたころ、僕は人とのやりとりがあまり得意ではありませんでした。
忙しい先輩へ急に仕事を頼んで断られたことがあります。
あとでその人から、
「最初に空いている日を聞いてくれたら、受けられたかもしれない」
と言われました。
僕はその日のうちにスマホのメモへ、
「頼む前に、相手の空いている日を聞く」
と残しました。
仕事を引き受けすぎて間に合わなくなったときは、
「受ける前に締め切りを確認する」
と書きました。
似たようなメモが少しずつ増えていきました。
自分が同じ失敗をしないためのものです。
妻から、
「今日、先輩に仕事をお願いしたら断られた」
と届いたとき、僕はそのメモを思い出しました。
そして、
「それは、先に相手の手が空く日を聞いてから頼むと通りやすい」
と送りました。
自分が失敗したときの話は書きませんでした。
必要なのは結論だけだと思ったからです。
妻の文が短くなっていることに気づきませんでした
それからも、妻から困りごとが届くと、似た経験をメモから探しました。
仕事を抱えすぎた話なら、以前の自分が残した対処法。
誰かと気まずくなった話なら、そのあと自分がどうしたか。
僕の中では、
「自分が失敗したから分かったことなら、役に立つかもしれない」
というつもりでした。
でも、失敗した部分を省いて結果だけ送るので、妻から見れば、
「こうすればいい」
と毎回言われているだけです。
そこまで考えていませんでした。
妻から届く仕事の話は、少しずつ減りました。
以前なら、
「今日こんなことがあって」
と書かれていたのに、
「今日は忙しかった」
だけの日が増えました。
僕は、仕事に慣れて愚痴が減ったのだと思っていました。
自分の返し方が原因だとは思いませんでした。
経験のないことまで、同じ調子で答えてしまいました
ある日、妻から、
「休日に先輩から頼まれたことを断りたい」
と相談されました。
僕はいつものように、自分のメモを開きました。
でも、そのときだけ当てはまるものがありませんでした。
僕自身、親しい相手から頼まれると断れず、引き受けてしまうことが多かったからです。
それなのに、
「分からない」
とは返せませんでした。
毎回やり方を答えてきたのに、その日だけ何も言えないのが嫌だったのだと思います。
以前どこかで聞いた、
「断るときは理由を詳しく言わないほうがいい」
という話を思い出しました。
それを、
「理由は言わないほうがいい。関係が続く相手なら、そのほうが角が立たない」
と送りました。
妻からは、
「わかった、ありがとう」
と返ってきました。
それで終わったと思っていました。
本当にそのやり方でよかったのか、僕から確認はしませんでした。
しばらくして、妻から、
「今日は、直すところを教えてほしいわけじゃないの」
と届きました。
僕は画面を見たまま止まりました。
それまで、困ったことが送られてきたら解決方法を返すものだと思っていたからです。
何を返せばいいのか分かりませんでした。
考えた末に、
「じゃあ、何て返したらいいのか教えてほしい」
と送りました。
妻から返ってきたのは、
「今まで教えてくれたやり方って、あなたも実際にやったことある?」
という質問でした。
僕はすぐに返せませんでした。
自分のメモを開きました。
ほとんどは、自分が失敗したあとに残したものです。
でも、妻へ送った断り方だけは違いました。
そこで初めて、今まで省いていた部分も含めて説明しました。
「今まで送ってたのは、ほとんど僕が失敗したあとに覚えたやり方なんだ」
「でも、あの断り方だけは、自分でやったことがなかった」
妻から、そのあと何が起きたのかを聞きました。
理由を言わずに断ったあと、先輩との会話が必要な用件だけになったそうです。
それが僕の言葉のせいだと断定はできません。
ただ、経験もないのに正しい方法のように言い切ったことは、そのとき初めて怖いと思いました。
そして...
僕は、
「それはごめん。やったこともないのに、正しいみたいに言った」
と送りました。
すると妻から、
「それもあるけど、最初から正解が欲しい日ばかりじゃなかったんだよ」
と返ってきました。
そこでもう1つ、自分が勘違いしていたことに気づきました。
妻から困りごとが届くと、僕は問題が出されたと思っていました。
でも妻は、毎回答えを求めていたわけではありませんでした。
今は仕事の愚痴が届くと、
「今日は聞くだけでいい?」
と先に聞くことがあります。
「どうしたらいいと思う?」と頼まれたときだけ、昔のメモを開きます。
そのときも、
「これは前に僕が失敗したときの話だけど」
と最初に書くようにしました。
自分にうまくいった方法が、そのまま妻にも正しいとは限りません。
それでも、失敗した本人の話としてなら、以前よりは正直に渡せると思っています。
(30代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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