「田舎者だから何も知らないんだね」と笑われた私が、試食会でつかんだチャンス
休憩室で笑われた
私の勤め先は、カフェ向けのスイーツや惣菜をつくる食品メーカーです。だから昼休みの話題も、今どこのカフェが人気か、というものでした。流行の店を知っていることは、この会社では仕事のリサーチも兼ねています。私が店の名前を知らないと答えると、同僚は笑いながら言いました。「田舎者だから何も知らないんだね」。流行を知らない人に商品づくりは無理でしょう、という響きでした。私は上京してまだ2年目。私は、何も言わずにお弁当のふたを閉めました。
試食会での質問
数日後、新商品の試食会がありました。テーブルに並んだのは、カフェ向けに開発中の、産地直送野菜を使った焼き野菜のプレートです。ひとくち食べた部長が、資料から顔を上げて言いました。「誰か、この産地のこと説明できる人はいる?」。売り出すには、味の理由を語れる言葉が必要でした。会議室は、誰も手を挙げないまま数秒が過ぎました。あの同僚も、資料をめくるばかりです。私は迷ってから、手を挙げました。
会議室の空気が変わった
「昼と夜の寒暖差が大きい土地なので、甘みが乗りやすいんです。私の実家も近くで畑をやっていたので、同じような野菜を育てていました」。部長は野菜と私を見比べて、大きくうなずきました。「その視点、次の企画にも入れてみよう。あなたにも参加してもらえる?」。拍手をしてくれる人もいました。流行のカフェは知らなくても、そのカフェに並ぶ野菜の味がどこから来るのかは、誰よりも知っていました。視界の端で、同僚が下を向くのが見えました。
そして...
帰り際、ロッカーの前で同僚が待っていました。「知らないのは、私のほうだった。ごめんなさい」。うつむいたままの謝罪でした。私は少し迷ってから答えました。「じゃあ今度、一緒においしい店を探しましょう」。任された企画の資料には、彼女が調べてくれたお店の情報も並んでいます。流行と畑、どちらの知識も商品になるのだと思います。
(20代女性・食品メーカー勤務)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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