「ごめん、380円だけ貸してくれる?」と頼んだ私が、謝罪をやめられなかった理由
380円が、頭から離れない
高校時代からの友人と、久しぶりにカフェで会った日のことでした。会計で端数が出せず、私は彼女に頼みました。
「ごめん、380円だけ貸してくれる?」
彼女は笑って小銭を出し、近くのATMに寄るのも、次に会うときでいいと返してくれました。それでも私は、駅で別れて1人になった途端、380円のことばかり考え始めていました。改札を通る間も、電車の窓に映る自分を見ている間も、頭の中では同じ場面が繰り返されていました。
謝りの文を、書き足し続けた
私には、ちゃんと理由を聞けないまま疎遠になった友達がいます。専門学校の頃、少額の立て替えを何度もしてもらい、笑って流しているうちに、その子からの連絡が減っていきました。理由を確かめる勇気が出ないまま、疎遠になりました。だからあの日も、帰宅してすぐ送金を済ませ、謝罪の文を打ち始めました。
「今日は嫌な思いをさせてしまってごめんなさい」
最初の段落を書いても足りない気がして、書き足すほど、送る前から返事が怖くなりました。謝りたいというより、嫌われていないことを確かめたかったのだと思います。結局長くなった文章を3件に分け、最後に「嫌いにならないでほしい」と打って、目をつぶりながら送信しました。
返ってきた、短い一言
返信は、拍子抜けするほど短いものでした。
「380円で嫌いになったりしないよ。今度ゆっくり話そう」
安心したはずなのに、次に会う約束が近づくほど、今度は長い謝罪を送ったことが恥ずかしくなりました。当日、先に切り出せずにいる私を、彼女は注文を挟んで待ってくれました。
「前に、貸し借りが続いていた時期に、友達と疎遠になったことがあるの」
口に出してみて、初めて気づきました。友達に離れられたのだとずっと思い込んでいたけれど、私も理由を聞かないまま距離を置いていたのだと。
そして...
謝りたくなる癖は、今も残っています。ただ、長い文を打ちかけたときは、一度手を止めて、会ったときに一言で伝えると決めました。この前の会計では、彼女と同じ画面をのぞき込んで、割り勘アプリで端数まで分け合いました。
会計のあとに謝る代わりに、次に行きたい店の話をしました。380円から始まった話を、私たちはまだ続けています。
(20代女性・販売職)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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