彼女の写真を一枚消した俺は、代わりに彼女の知らない写真を一枚残した
消したのは泣き顔の写真だった
彼女と初めて小旅行に行った日、俺は何枚も写真を撮りました。海沿いの道を歩く彼女、カフェの前で笑う彼女、坂道でこちらを振り返る彼女。どの写真も、あとで見返したいと思えるものばかりでした。
その中に、彼女の顔がはっきり写った写真が1枚ありました。撮った直後は、いい写真だと思っていました。けれどあとから見返すと、その表情が少し違って見えました。笑っているようで、泣いたあとを隠しているようにも見えたのです。
旅行の途中、俺の言い方がきつくなった場面がありました。道に迷って焦っていた俺が、彼女に当たるような言い方をしてしまったのです。彼女は「大丈夫」と言いましたが、そのあと少しだけ距離を置いて歩いていました。
後ろ姿だけは残したかった
俺はその顔の写真を消しました。彼女があとから見返したとき、嫌な気持ちになるかもしれないと思ったからです。でも本当は、彼女のためだと言いながら、泣かせてしまった場面を自分が見返したくなかっただけかもしれません。
消したあとも、別の写真は残しました。彼女が少し前を歩いている後ろ姿の写真です。海沿いの坂道で、髪が風に流れていて、こちらを振り返る前の1枚でした。その写真を見たとき、俺はこの人とこれからも歩いていきたいと思いました。
だから、後ろ姿だけは消せませんでした。顔が写っていないから大事ではない、というわけではありません。むしろ、その写真には俺の気持ちが一番残っていました。
伝えなかったせいで生まれた誤解
後日、彼女と写真を見ていたとき、彼女が「あの顔が写ってる写真、消したよね」と言ってきました。その瞬間、俺は自分が勝手に決めていたことに気づきました。
彼女を思って消したつもりでした。でも、確認しなければ、それはただの自己判断です。彼女からすれば、自分の顔が写った写真だけ消され、後ろ姿だけ残されたように見える。そこまで考えていませんでした。
「君が泣いてるところだったから」と説明すると、彼女はすぐには納得しませんでした。当然だと思います。俺が先に話していれば、不安にさせずに済んだことでした。
そして...
彼女は「消す前に聞いてほしかった」と言いました。その言葉を聞いて、俺は写真を消したことより、理由を話さなかったことのほうが彼女を傷つけたのだと分かりました。
大切にしたい気持ちも、伝えなければ別の意味に見えてしまいます。後ろ姿の写真を残した理由も、泣き顔の写真を消した理由も、俺の中だけに置いていたから、彼女を不安にさせました。
次に写真を撮るときは、彼女にちゃんと聞こうと思います。残すか消すかを勝手に決めるのではなく、2人で選びたいです。俺が残したかったのは後ろ姿ではなく、彼女と歩いていく時間だったのだと、今なら言葉にできます。
(20代男性・営業職)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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