同僚の恋愛相談を受けていた俺が、あるきっかけで気づいてしまった相手の正体
「相談に乗ってもらえませんか」
彼女とは、仕事の話をよくしていました。ただ、個人的な話を深くすることは多くありませんでした。だから「相談してもいいですか」と言われたときは、珍しいなと思いながらも、同僚として聞くつもりでした。
彼女は「職場に気になる人がいる」と言いました。名前は出さず、話し方も慎重でした。俺が「どんな人?」と聞くと、彼女は「困っているときに助けてくれる人」「話をちゃんと聞いてくれる人」と答えました。その時点では、誰のことなのか決めつけないようにしていました。
けれど、傘の話が出たところで、聞き流せなくなりました。「雨の日に傘を貸してくれたことがあって」と彼女が言ったからです。俺には覚えがありました。前に、傘を忘れた彼女へ自分の傘を渡したことがあったのです。
気づいたあと、怖くなった
さらに彼女は、「休憩室でよく無糖のコーヒーを買っている人」と続けました。その日も、俺の机には同じ缶がありました。偶然で片づけるには、重なるものが多すぎました。
彼女の気持ちが俺に向いているなら、うれしい。そう思う一方で、すぐに返事をする勇気は持てませんでした。もし勘違いなら、自意識過剰な同僚になる。もし本当なら、相談相手として近くにいた俺が、急に相手役の顔をすることになる。そのどちらも、簡単には選べませんでした。
だから俺は、彼女との会話を減らしました。休憩に誘われても用事があると言い、仕事が片づいたあとのやり取りも短くしました。彼女を困らせないためだと考えていましたが、実際は、自分が答えを出す時間を引き延ばしていただけでした。
逃げたのは、自分を守るためだった
彼女の言葉を思い返すほど、俺は自分の反応の遅さが嫌になりました。うれしいなら、ちゃんと伝えればよかった。迷っているなら、迷っていると話せばよかった。なのに俺は、距離を置くことで、その場をやり過ごそうとしていました。
彼女に「迷惑でしたよね」と聞かれたとき、ようやく自分が何をしていたのか分かりました。迷惑だったから避けたわけではありません。むしろ、逆でした。けれど、その迷いを説明しないまま離れたせいで、彼女を不安にさせていました。
そして...
俺は自販機で無糖のコーヒーを2本買い、1本を彼女の机に置きました。その日はそれ以上話せず、席に戻りました。逃げるのをやめると決めても、すぐに気持ちを形にできたわけではありません。翌日の休憩時間、彼女に「少し話せる?」と声をかけました。そして向き合ってから、「相談相手としてじゃなくて、相手として聞いてもいい?」と聞きました。
彼女がうなずいたあとも、避けていた時間が消えるわけではありません。次に話すときは、相談を受ける立場に逃げず、ちゃんと自分の気持ちで向き合おうと思いました。
(20代男性・会社員)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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