買い物リストから彼女の好物を消し続けた俺が、最後に書き足したもの
消していたのは、俺だった
同棲を始めて一年が経ち、二人の荷物も増えて、そろそろ広い部屋に移ろうかと話していました。引っ越しには思っていた以上のお金がかかります。少しでも貯めたくて、俺はまず自分の支出から削ることにしました。毎日の昼はコンビニから手作りの弁当に切り替え、週末に通っていた居酒屋にも行かなくなりました。それでも貯まる速度は思ったほど上がりません。日用品は削れない。
だったら、なくても困らないものから減らすしかない。彼女がリストに書き足すプリンや高めの入浴剤を、俺は買い物のたびにそっと消していきました。彼女のためにもなる、二人の将来のためだと、そのときの俺は信じていました。
本当のことを、言えなかった
彼女のプリンを消すとき、指がほんの一瞬止まることが何度かありました。それでも自分は弁当も居酒屋も我慢しているのだから、と振り切って消していました。
そんなあるとき、彼女がリストの画面を見せて聞いてきました。「私の好きなもの、いつも消えてるよね」。貯金のことを正直に言えばよかったのに、自分だけ理屈で納得していた後ろめたさが先に立って、俺は「それは今はいいかなって」と当たり障りのない返事でごまかしました。彼女の顔が曇ったのが分かっても、俺はそこで話を終わらせてしまいました。そのあと、彼女はリビングに戻って黙ってスマホをいじっていました。守っているつもりで、俺は一番近くにいる人を一人にしていたのです。
彼女が、何も書かなくなった
それから、リストに彼女が書いたものが並ばなくなりました。最初は節約に協力してくれているのだと、都合よく考えていました。けれど買い物カゴに、彼女が自分のために何かを入れることもなくなっていきます。前に彼女が言っていた言葉を思い出したのは、その頃です。「これがあると、一週間がんばれるんだよね」。疲れ切った彼女にとって、あのプリン一つが踏ん張る理由だったのかもしれない。俺はそれを、相談もせずに黙って減らしていたのです。
そして...
貯金のことを切り出すより先に、俺は自分でリストにプリンを書き足しました。買い物から帰ると、袋からのぞいたプリンに気づいた彼女が、こちらを見ました。「勝手に決めて、ごめん」。頭を下げて、「二人で貯めたかっただけなんだ」と打ち明けました。自分の昼も弁当に変えていたこと、行きつけの店に通うのもやめていたことも、そこで初めて話しました。先に言っていれば、彼女を一人で削らせずに済んだのに、と言いながら、声がうまく出ませんでした。
それでも、何を残して何を削るか、これからは二人で決めようと約束してくれました。次のリストには、彼女の好きなものがまた一つ、戻っていました。
(20代男性・営業職)
本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。
(ハウコレ編集部)
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