私が伝えた候補日だけ、好きな人の予定が埋まっていた話
予約ページで決めてきた、二度の約束
彼はWeb制作の仕事をしていて、日程の連絡には自分の予約ページを使う人です。空いている枠を選ぶだけで約束が決まる仕組みで、最初に届いたときは、打ち合わせみたいですねと、彼に笑って返したくらいです。それでも、決めた日を一度も動かさない、その几帳面さごと好きになっていました。
だから今回は、私のほうから日にちを送ってみたのです。
「来月なら、18日か21日か26日が空いています」
「了解。ちょっと調整するから、少し待ってて」
返事の早さに、少しだけ浮かれていたのだと思います。手帳の丸を、上からもう一度なぞりました。
選べたのは、私の知らない日ばかり
二日たっても、続きの連絡は来ませんでした。急かすつもりはなく、空き具合だけでも見ておこうと、私は保存してあったリンクを開きました。
ページを下の端までたどって、それからゆっくり上へ戻りました。18日も、21日も、26日も、枠ごと選べなくなっていたのです。その前後の日は、いくつも空いたまま残っています。
偶然なら、ここまできれいに重なるでしょうか。伝えた三日だけが塞がって、ほかの日は選べる。仕事が入っただけ、たまたまだと並べてみても、先に浮かぶのは別の言葉でした。避けられている。一度そう読めてしまうと、ほかの読み方が見つかりません。
その日は手帳に触れる気になれないまま、鞄の奥にしまいました。
精いっぱいの強がりを送ったあとで
翌日になっても、ページの並びは同じでした。理由を尋ねるのは重いし、知らないふりで誘い直すのも苦しい。迷った末に、いちばん傷つかずに済みそうな言葉を選びました。
「予約ページ、見ました。忙しそうなので、落ち着いたらまた誘ってください」
送ってすぐ、アプリごと閉じました。これで終わるならそれまでの縁だと、先回りして自分に言い聞かせるためです。
返ってきたのは、文字ではありませんでした。彼の名前が、着信の表示といっしょに浮かんでいます。出ると、いつもより早口の声が聞こえました。
「あれは埋まったんじゃなくて、埋まらないようにしてたんだ」
説明を待つ私に、彼は続けました。
「行きたいって言ってた店の予約が取れてから、誘うつもりだった」
彼は、二度目に会った帰りに私が話した、路地裏のイタリアンの予約を取ろうとしてくれていたのです。あの店は来月分の予約がまだ取れないのだと、彼は言いました。
「先に言ってよ」
「ごめん。先に言えばよかった」
返した声は、自分で思っていたより明るく出ました。
「お店なんて、どこでもよかったのに」
そして...
21日、駅前で待ち合わせて、店は歩きながら相談して決めました。彼は閉じたままの三つの枠の話をして、今さらのように頭を下げました。
手帳の三つの丸は、会えた日だけを残して消しました。次の約束は、予約ページではなく、ふたりのトーク画面で決めるつもりです。
(20代女性・営業事務)
本人記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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