初めて部屋に来た彼が差し出した花束、その宛名は私の名前ではありませんでした
楽しみにしていた、初めての訪問
その日が来るのを、私は何日も前から楽しみにしていました。彼と付き合い始めて半年、ようやく私の部屋に来てもらえることになったのです。お気に入りのカップを並べ、クッションの位置を何度も直し、彼が好きだと言っていたお菓子も用意しました。
インターホンが鳴ったとき、思わず鏡で前髪を確認してしまいました。ドアを開けると、彼は花束を抱えて立っていて、私のために選んでくれたのだと、その瞬間は本当に嬉しかったのです。
花束に添えられた、知らない名前
花瓶に生けようと花束を受け取ったとき、透明なフィルムの内側に小さなカードが挟まっているのに気づきました。開いてみると、そこに書かれていたのは私の名前ではなく、前にこの部屋に住んでいた人の名前のようでした。
「この名前、私じゃないよね?」と尋ねると、彼は少し目をそらしました。
「ああ、前の人のだと思う。下に届いてたみたいでさ」「もったいないから、持ってきた」
そう言って彼は、なんでもないことのように笑ったのです。
のみ込んだ言葉と、小さな後悔
その笑顔を見て、私は用意していた言葉をのみ込みました。初めて来てくれた彼の前で空気を悪くしたくなくて、「そっか、ありがとう」とだけ返したのです。
本当は、もっと違う言葉を探していました。私のために選んでくれた花だと思って、あんなに浮き立っていた自分が、急に恥ずかしくなりました。彼にとって今日は、私が思っていたほど特別ではなかったのかもしれない。そんな考えが、頭の片隅から離れませんでした。
そして...
その花を、私は結局その日のうちには生けられませんでした。知らない名前のカードがついた花を、自分の部屋にどう置けばいいのか、わからなかったのです。
それでも、彼が玄関で見せた少し慌てたような表情を、私は何度も思い返していました。あのとき彼は、本当はなんと言いたかったのでしょう。
聞けなかった私にも、きっと悪いところはあったのだと思います。次に会うときは、今度こそ自分の気持ちを言葉にしてみようと、そう決めています。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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