昇進した彼女の名前を、お祝いメールにあえて書かなかった。僕が選んだ伝え方
三人のうち、二人だけ書いた
同じ時期に昇進したのは三人。そのうち二人の名前は、迷わず書くことができました。「これからの活躍を期待しています」と、当たり障りのない、けれど心からの言葉を添えて。
問題は、もう一人でした。彼女の名前を打ち込もうとしては、何度も書いて消しました。同期と同じ一行で済ませてしまっていいのか。みんなへのお祝いに紛れ込ませる形で、彼女への言葉を流してしまいたくない。そんな思いが、僕を妙に慎重にさせていました。
あの一行で終わらせたくなかった
正直に言えば、僕は彼女のことが気になっていました。仕事ぶりを近くで見てきて、誰よりもこの昇進を喜びたいと思っていたのです。だからこそ、全員宛のメールに名前を並べて「おめでとう」と書くのが、どうしても嫌でした。
それでは、ただの事務連絡になってしまう。彼女にだけは、ちゃんと向き合って伝えたい。そう考えた末に、僕は彼女の名前を書かないまま、メールを送ってしまったのです。あとで個人的に伝えればいい。そのときは、それが一番いい方法だと信じていました。
僕の都合が、彼女を不安にさせていた
けれど、いざ伝えようとすると、言葉がうまくまとまりません。気の利いた一言を探しているうちに、何日も過ぎていきました。そのあいだに、彼女の様子が変わっていきました。
業務の連絡はそっけなくなり、目も合わせてくれなくなったのです。そこでようやく気づきました。自分の気持ちを大切にしているつもりで、僕は彼女を置き去りにしていたのだと。
お祝いされるはずの日に、たった一人だけ名前を呼ばれなかった彼女が、どんな気持ちでいたか。考えが及んでいなかった自分が、情けなくなりました。
そして...
これ以上、彼女を待たせてはいけない。僕は短いメッセージを送りました。
「昇進、おめでとう。みんなと一緒に送るのは、どうしても嫌だったんだ。」
飾った言葉も、気の利いた一言も、結局なにも見つかりませんでした。それでも、自分の口で伝えられたことだけは、よかったと思っています。名前を書かなかった理由を、彼女はどう受け取っただろう。確かめるのが少し怖くもあります。
それでも次に会えたら、今度こそ遠回りせずに、まっすぐ「おめでとう」と伝えたい。そう思いながら、僕は返信を待っています。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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