好きな人にそっと置いた差し入れ。お礼を言われていたのは、私ではなく先輩でした
ひとことも言えなかった差し入れ
彼は同じ部署の同僚で、私がひそかに想いを寄せている人でした。ここ数週間、納期に追われて遅くまで残っている姿を、私はずっと気にかけていました。
いつだったか、彼が私に、徹夜続きで微糖の缶コーヒーばかり飲んでいると話していたことがあって。だから私は同じ銘柄を一本、小さなお菓子と一緒にデスクへ置いたのです。
名前を書けば、想いまで伝わってしまう気がしました。喜んでくれたらいい。ただそれだけの、ささやかな気持ちでした。
笑顔のお礼は、私のほうを向かなかった
人が増えてきたフロアで、彼が缶コーヒーに気づいたようでした。誰かを探すようにあたりを見回す彼の前に、ちょうどお菓子をよく配ってくれる先輩が通りかかりました。彼は明るい声で言いました。
「先輩、差し入れありがとうございます」
先輩は「いえいえ、いつものことですから」と笑って返しています。そして彼は続けました。
「こういう気遣いがさらっとできる人って、いいですよね」
その言葉は、自分のデスクにいる私の耳にまっすぐ届きました。ほんの短い間、彼と目が合った気がしましたが、視線はすぐに逸れていきました。
名前を書かなかったのは、私です
違う、それは私が置いたんです。そう言えたら、どれだけよかったでしょう。けれど名前を書かなかったのは私自身です。今さら手を挙げて主張するのも浅ましい気がして、私は手元の書類に視線を落としました。
本当に苦しかったのは、お礼の相手を間違えられたことではありません。「こういう気遣いがさらっとできる人って、いいですよね」と彼が口にしたとき、その視界に私がまったく入っていなかったことです。
毎日彼を目で追い、好きな飲み物まで覚えていた私は、彼にとって気づかれてすらいない存在だったのだと感じました。
そして...
それでも、私はあの差し入れを後悔していません。誰のためでもなく、疲れている彼に少しでも元気が出たらと思って選んだ一本です。お礼が私に向かなかったとしても、彼がそれを飲んで、ほんの少しでも力が出たのなら、それでよかったのだと今は思えます。
ただ、これからは自分の気持ちを、こんなふうに名前のないかたちで隠すのはやめようと決めました。次に何かを手渡すときは、ちゃんと自分の名前で。たとえ届かなかったとしても、私の気持ちは私のものとして、まっすぐ差し出したいのです。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
関連記事
「コラム」カテゴリーの最新記事
-
「似た者同士」は短命?9か月で別れるカップルの特徴とレスキュー法恋学 -
【星座×血液型別】「私が守る!」彼を支える芯の強い女性ランキング<第1位〜第3位>ハウコレ -
【誕生月別】穏やかすぎる♡争いを避けるのが上手な女性ランキング<第1位〜第3位>ハウコレ -
【誕生月別】「実は人見知り」仲良くなると甘えてくる女性ランキング<第1位~第3位>ハウコレ -
「俺…子どもがデキたみたいだ」夫から妊娠報告!?⇒事態の【真相】に「やめて…嘘でしょ」妻が震え始めたワケGrapps -
付き合って最初の3ヶ月が勝負。彼との関係を安定させるために今すぐやるべきことハウコレ -
「なんか近寄りがたい…」男性が距離を置きたくなる女性に共通する雰囲気とはハウコレ -
言葉にしない男性ほど行動に出る。彼が「好き」を伝えている無言のサイン5選ハウコレ -
【誕生月別】穏やかすぎる♡争いを避けるのが上手な女性ランキング<第4位〜第6位>ハウコレ