席順表に好きな子の席を手書きで足した僕。親友をひとつ横にずらしてまで隣にした理由
ひとつだけ、埋められなかった席
いつもの友人グループで食事会をすることになり、僕が幹事を引き受けました。お店の個室に合わせて、長方形のテーブルにみんなの名前を書き込んでいきます。全員分を書き終えても、僕はその紙をなかなか片付けられずにいました。
彼女が来るかどうか、まだ返事をもらえていなかったからです。気になっている人ほど、自分から強く誘うのは勇気がいります。来ないかもしれない。そう思いながら、僕は彼女のぶんだけ空けて、いったん紙をしまいました。
彼女の返事が届いて、僕はペンを握った
あきらめかけていたころ、彼女から直接メッセージが届きました。
「やっぱり、私も行ってもいい?」
そのメッセージを読んで、僕は思わず声をあげそうになりました。間を置かずに、「もちろん。席、用意しておくね」と返しました。そしてすぐ、しまっていた席順表を取り出したのです。彼女の席をどこにしよう。考えるより先に、僕は手近なペンを握っていました。
気づけば僕は、表に使ったのとは別のペンで、隣にいた親友の名前に小さな矢印を引き、ひとつ横の席へずらしていました。そうして空いた自分の隣のすきまに、押し込むようにして彼女の名前を書き足したのです。
きれいに並んだ名前の中で、そこだけが急いた筆跡でした。新しく作り直す時間も惜しくて、そのまま写真に撮り、グループに「席順、こんな感じで決めたよ」と送ったのです。
身勝手だったかもしれない手書き
送ってしまってから、急に不安になりました。あの手書きの席は、どう見ても僕が彼女を隣にしたがっているようにしか見えません。みんなにそう思われたら。彼女に重いと感じられたら。考え出すと、画面を開いたままにしておけませんでした。
それに、ずらされた親友には、ひとことも相談していませんでした。自分の気持ちを優先して、勝手に人の席を動かしてしまった。きれいに整っていた表に、自分の欲が一か所だけはみ出している。あの乱れた筆跡が、そのときの僕そのものでした。
そして...
食事会の当日、彼女は来てくれました。僕は平気なふりをして手をあげ、隣の席へ案内しました。腰を下ろした彼女に、「ここ、空けといたから」と、なんでもないふうに言うのが精一杯でした。
本当は、空けていたのではなく、無理やり空けたのです。それでも、隣で笑う彼女を見ていると、あの身勝手な手書きも悪くなかったと思えてきました。
次に会うときは、どうしてあの席を書き足したのか、ちゃんと自分の言葉で伝えたい。整った表からはみ出したあの手書きこそが、僕の本当の気持ちでした。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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