謝辞から彼女の名前を外した僕。本当は誰より評価していたのに
給湯室で聞いてしまった声
僕は彼女と同じ部署の先輩で、今回のプロジェクトでは二人で多くの作業を分担しました。資料の数字も、構成のほとんども、彼女が支えてくれたものです。だから謝辞には当然、彼女の名前を書くつもりでいました。ところが資料を仕上げる前、給湯室の前を通りかかったとき、同僚たちの話し声が聞こえてきたのです。「あの子が目立つのは、彼に気に入られてるからでしょ」。その一言が、頭から離れませんでした。
守るつもりで、名前を消した
もし謝辞で彼女の名前を目立たせれば、あの噂はもっと広がるかもしれない。彼女の頑張りが、実力ではなく僕への好意のおかげだと言われてしまう。そう考えた僕は、彼女の名前だけを一覧から外して資料を配りました。彼女を守るための判断だと、自分に言い聞かせていました。けれど報告会のあと、仕事の帰り際に廊下で彼女に呼び止められたのです。「謝辞、私の名前だけありませんでしたね」。僕は彼女の顔をまっすぐ見られず、「ごめん。理由は、今は言えない」とだけ返しました。
本当に守りたかったのは誰か
彼女に理由を言えなかったのは、説明すればもっと彼女を傷つける気がしたからです。けれど、それだけではありませんでした。あの噂の中心に自分の名前があることが、僕自身も怖かったのだと思います。彼女のためと言いながら、本当は自分が逃げたかっただけなのかもしれません。名前を外すかどうかを、彼女に一度も相談しなかったこと。それが一番、彼女から大切なものを奪っていたのだと、距離を置かれて初めて気がつきました。
そして...
彼女の名前を勝手に消したことは、どんな理由があっても僕の間違いでした。守るかどうかを決めるのは、僕ではなく彼女自身だったはずです。次に話せる機会があれば、噂のことも、自分が怖かったことも、全部正直に伝えようと思います。そして、本当はあの謝辞の一番上に、彼女の名前を書きたかったのだと。許してもらえるかはわかりません。それでも、もう一度きちんと向き合うことから始めたいと思っています。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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