表札から彼女の名前を消した僕。本当は、別の表札を職人に頼んでいた
内緒にしていた計画
彼女との同棲を決めたとき、僕にはひそかに考えていたことがありました。一緒に暮らすこの家で、彼女にプロポーズをしようと思っていたのです。表札を選ぶとき、彼女は「二人の名前を並べた表札にしようね」と言いました。僕は「うん、そうしよう」と答えました。
でも本当は、その先のことまで考えていたのです。二人の名前を並べるなら、いつか同じ名字になったときの表札のほうがいい。そう思って、僕は職人さんに、彼女の名前を入れた特別な表札を一から作ってもらう手配を、こっそり進めていました。
言えなかった一言
完成した表札の箱を開けた彼女が、その場で黙り込んだのが分かりました。そこにあるのは、引っ越しの手続きに間に合わせるために頼んだ、僕の名前だけの表札です。彼女は確かめるように聞いてきました。「これ、あなたの名前しかないよね。私の名前は?」。本当のことを言えば、すべてのサプライズが台無しになる。そう思った僕は、目を合わせないまま「今はこれでいいから」とだけ返しました。彼女は声を落として「私の名前は、いらないってこと?」と言いました。違う、そうじゃないんだ。そう叫びたいのをこらえて、僕は「そうじゃない。もう少しだけ待ってほしいんだ」と言うしかありませんでした。
サプライズより大切なもの
それから彼女は、表札の話を避けるようになり、口数も減っていきました。僕のいないところで、ひとりで何かを抱え込んでいるのが伝わってきたのです。僕は、自分のしたことの意味にようやく気づきました。喜ばせたい一心で進めていたつもりが、本当は、自分が思い描いた完璧な瞬間を優先していただけだったのではないか。彼女が今どんな気持ちでいるかより、サプライズを成功させることばかりを考えていた。良かれと思ってやったことで、僕は目の前の彼女を一番ないがしろにしていたのだと思います。
そして...
完璧なプロポーズなんて、もう後回しでいい。そう思いました。僕は、かばんにしまっていた特別な表札を取り出して、彼女に全部話そうと決めたのです。名前を並べたかったのは、僕も同じでした。ただ、その気持ちを伝える順番を、僕はすっかり間違えていた。彼女を驚かせるより先に不安にさせてしまったことを、まずはきちんと謝りたい。彼女の名前が刻まれたこの表札を玄関に掲げる前に、僕の本当の気持ちを、まっすぐ彼女に伝えようと思います。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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