「また連絡するね、ゆき」。彼から届いた音声メッセージに、知らない名前が残っていた
音声メッセージで届く、短い言葉
ここ最近の彼は、いつも忙しそうでした。文字を打つ余裕もないのか、返信はたいてい音声メッセージで、用件だけを話した短いものばかり。それでも連絡が来るだけましだと、私は自分に言い聞かせていました。その日のメッセージも、いつもと同じだろうと思っていました。「今度の休みも会えそうにない。ごめん。また連絡するね、ゆき」。スマホから出る音を、私は何度も聞き返しました。ゆき。それは、私の名前ではありません。打ち間違いではなく言い間違いです。彼が、その名前を口にしたということ。考えれば考えるほど、嫌な想像ばかりが浮かんできました。
確かめられないまま
ゆきって、誰だろう。私の知らない人かもしれない。もしかしたら、私より大事な人なのかもしれない。一度そう思うと、もう止められませんでした。彼に直接聞けばいいのに、その一言がどうしても打てません。返信欄に文字を入れては消し、入れては消し。問いただして関係が壊れるのが怖くて、私は当たり障りのないスタンプだけを送りました。それからの数日は、何をしていても上の空でした。彼からの次のメッセージを待ちながら、来たら来たで内容を確かめるのが怖い。そんな落ち着かない気持ちが、ずっと続いていたのです。
思い切って聞いた答え
このままではいけないと、私はようやく覚悟を決めました。次に彼と電話がつながったとき、できるだけ軽い口調を装って聞いてみたのです。「ゆきって、誰?」。少し間があってから、彼は驚いたような声で答えました。「妹だよ。引っ越しの片づけ、手伝ってたんだ」。拍子抜けするほど、あっさりとした答えでした。妹さんの名前だったなんて、想像もしていませんでした。彼は続けて、「言えばよかった。心配かけてごめん」とまっすぐに謝ってくれました。その声を聞いて、張りつめていた気持ちが、すっと軽くなりました。
そして...
ゆきという名前の正体がわかって、私はほっとしました。けれど同時に、自分がどれだけ彼の事情を知らなかったのかにも気づかされたのです。忙しい理由も、休みに何をしているのかも、私は何ひとつ聞けていませんでした。短いメッセージの向こう側にある彼の毎日を、いつのまにか想像することすらやめていたのだと思います。本当に不安だったのは、知らない名前そのものではなく、彼との間にできていた距離だったのかもしれません。これからは、聞きたいことはちゃんと聞こうと決めました。次に会えたら、妹さんの話も、彼の忙しい毎日のことも、ゆっくり聞いてみるつもりです。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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