彼女の食材だけ別の袋に分けた俺が、口に出せなかった本当の理由
二つずつ、カゴに入れたわけ
彼女とは付き合って二年ほどになります。休みのたびにどちらかの部屋で過ごすうち、彼女は自分の好きな食べ物を、わざわざ家から持ってくるようになっていました。俺の部屋には置いていないヨーグルトや豆乳を、紙袋に入れて。
冷蔵庫を勝手に使って悪い、と小さくなる彼女を見るたびに、俺は思っていたのです。そんなに気をつかわなくていいのに、と。
だからその日、同じものを二つずつ買いました。彼女の分だけをまとめた袋を渡して、「これ、全部君の。もうここに置いていきなよ」と言うつもりだったのです。そろそろ一緒に暮らさないか、という気持ちも込めて。
「それは分けておいて」と言った瞬間
ところが部屋に戻り、袋を台に並べていると、彼女がその小さな袋からヨーグルトを取り出し、冷蔵庫へしまおうとしたのです。とっさに俺は声を上げていました。
「それは分けておいて」せっかくまとめた袋が、いつもの場所にしまわれてしまう。そう思った瞬間、口が勝手に動いていたのです。
「どうして分けるの?」と、彼女は不思議そうに俺を見ました。今だ、ここで言えばいい。頭ではわかっているのに、俺はまた別のことを口にしていました。「いいから、そのままで」と、目を逸らしながら当たり障りのない言葉で、その場をやり過ごしてしまったのです。
言えなかった、たった一言
彼女の表情が、わずかに曇ったのがわかりました。きっと、突き放されたように感じたのだと思います。そうじゃないと言いたいのに、言葉を重ねるほど、自分の気持ちがうまく形にならない気がしました。
本当はずっと、怖かったのかもしれません。一緒に暮らそうと口にして、もし重いと思われたら。そう考えるほどに、用意していたはずの言葉が遠ざかっていくようでした。
結局、彼女は別の袋を抱えて帰っていきました。引き止める言葉も、本当のことも、結局は伝えられないままで。
そして...
一人になった部屋で、俺は台の上をぼんやり眺めていました。彼女のために選んだはずの食べ物が、今は誰のものでもなく残っています。分けたかったのは、彼女のものと俺のものじゃない。むしろ、その逆だったのに。
俺はスマホを手に取りました。今度は逃げずに、この袋ごともう一度差し出そう。「これ、全部君の」と、たった一言を添えて。
情けない遠回りばかりですが、彼女にだけは、まっすぐ伝えたいと思ったのです。
(20代男性・営業職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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