記念日に彼が予約したお店。私の席は入口側で、向かいの彼はずっと私の後ろを見ていました
入口側に回された私の椅子
お店に着くと、感じのいい店員さんが奥のテーブルへ案内してくれました。二人掛けの席で、片方は壁を背にした落ち着いた側、もう片方は通路沿いの入口側です。彼は当たり前のように壁側へ腰を下ろし、私は通路側の椅子に座ることになりました。記念日に予約してくれたこと自体は、素直に嬉しかったのです。それでも、何となく落ち着かない気持ちが残りました。
すぐ横を店員さんが行き来して、扉が開くたびに外の空気が流れ込んできます。記念日くらい、こっち側に座らせてくれてもいいのにな。口には出さず、私はメニューを開きました。
私の後ろばかり見ている彼
料理が運ばれてきても、彼はどこか上の空でした。私が仕事の話をしても、相槌は「うん」「ああ」と短いものばかり。視線は私を通り越して、私の背後にある入口のほうへ何度も向けられます。誰か知り合いでも探しているのだろうか。
それとも、私と過ごす時間が退屈なのだろうか。考えれば考えるほど、せっかくの料理の味がわからなくなっていきました。思いきって、私は尋ねました。「ねえ、どこか具合でも悪い?」彼は一瞬だけこちらを見て、「ううん、何でもないよ」と、またすぐに入口のほうへ目をやりました。
「つまらない?」と聞いた私
我慢できずに、私はもう一度声をかけました。「私といても、つまらない?」彼は少し慌てた様子で、「そんなことない。ちょっと落ち着かないだけ」と答えました。落ち着かない、というその言葉が、妙に引っかかりました。私と向き合うことが、そんなに落ち着かないのだろうか。記念日のために選んできた服も、楽しみにしていた気持ちも、急にしぼんでいくようでした。
食事を終えるころには、私たちの間にはぎこちない空気が流れていました。会計を済ませる彼の背中を、私は通路側の椅子から見上げていました。
そして...
帰り道、私たちはあまり言葉を交わしませんでした。彼は時々、何か言いたそうに口を開きかけては、結局やめてしまうのでした。家に着いてからも、入口側の椅子にぽつんと座っていた自分の姿が、何度も頭に浮かびました。きっと、私が深く考えすぎなだけなのかもしれません。それでも、記念日にこんな気持ちになったのは初めてでした。
今度ちゃんと、あのとき何を考えていたのか聞いてみよう。一人で答えを決めつけてしまう前に、彼の言葉で聞いてみたい。そう思えたことが、今の私にできる精いっぱいの前向きな一歩でした。
(20代女性・アパレル販売)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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