恋人を「ちょっとした知り合い」と濁した僕が、彼女に謝るまでに考えていたこと
同級生の顔を見た瞬間
「おっ、久しぶり」。そう声をかけてきたのは、学生時代にいつも僕の前を歩いていた同級生でした。成績も人付き合いも就職先も、何もかも僕より上で、隣にいるだけで自分が小さく見える相手です。社会人になってからは会う機会もなく、その引け目も忘れていたつもりでした。けれど顔を見た途端、あの頃の感覚が戻ってきます。彼の視線が僕の隣へ向いたとき、僕の中の何かが身構えていたのだと思います。
「彼女さん?」に、言えなかったこと
彼が恋人のほうを見て、「もしかして、彼女さん?」と聞いてきました。本当ならすぐに、そうだと答えればよかっただけです。けれど僕は、ほんの少し間を置いて、「いや、ちょっとした知り合いで」と口にしていました。隣で彼女が、うなずきかけたまま動きを止めたのが、横目に見えました。この相手にだけは、自分の幸せを品定めされたくない。詮索されて、また何かを比べられたくない。とっさにそう考えてしまったのです。
守ったのは、彼女ではなかった
同級生が去ったあと、彼女はいつものように笑ってくれませんでした。当然です。僕はあの瞬間、彼女の立場よりも、自分のちっぽけな見栄を優先したのですから。守るべきだったのは隣にいる人なのに、僕が守ったのは過去の引け目だけでした。歩きながら、自分の情けなさばかりが積み重なっていきます。このまま黙っているわけにはいきません。駅が近づいた頃、僕はようやく足を止めて、彼女のほうへ向き直りました。
そして...
「ごめん。あのとき、ちゃんと紹介できなくて」。そう切り出してから、僕は「あいつには、昔からずっと敵わなくて」と打ち明けました。情けない理由だと、自分でもわかっています。それでも、彼女を下に見たわけではないことだけは、どうしても伝えたかったのです。彼女は少し考えてから、次は隣で名前を呼んでほしいと言ってくれました。その言葉に、僕は深くうなずきました。
次に誰かと会ったら、ためらわずに恋人だと言える自分でいたい。彼女の隣に立つというのは、そういうことなのだと、ようやくわかった気がします。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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