伝えたい言葉が出てこなくて、ホームで録ったボイスメモを送ってしまった僕の話
言えないまま過ぎた数週間
僕は彼女と二年付き合っている会社員です。少し前に、遠い土地の支社へ移ってほしいという話を会社から受けていました。返事の期限が迫っているのに、僕はそのことを彼女に話せずにいたのです。
話せば、二人の関係が変わってしまう気がして怖かった。一緒に来てほしいと頼むのも、ここで区切りをつけようと言うのも、どちらも口にする勇気が持てませんでした。彼女からのメッセージに短い返事しか返せない日が続きます。考えごとをしている僕に彼女が気づいていることもわかっていながら、僕は肝心なことを切り出せないままでいました。
ホームで押した録音ボタン
異動について最終的な話し合いをした帰り道、僕は乗り換えの駅のホームに立っていました。このまま黙っているわけにはいかない。そう思って、彼女に送るつもりで録音ボタンを押しました。
ところが、いざ伝えようとすると、何から話せばいいのかわからなくなりました。一緒に来てほしい、でも彼女の仕事や生活を変えてしまう。その迷いがぐるぐると回るばかりです。そうしているうちに電車が入ってきて、発車を知らせるメロディが鳴り始めました。慌てて乗り込み、気づいたときには、声の入っていない録音をそのまま送ってしまっていたのです。
届いた「どうしたの?」
電車の中で、彼女から「どうしたの?」とメッセージが届きました。既読をつけたものの、なんと返せばいいのかわからず、僕は画面を見つめていました。あの音だけの録音を、どう説明すればいいのか見当もつかなかったのです。
家に着いてから、僕は思い切って彼女に電話をかけました。最初に出てきたのは「ごめん」という言葉でした。そして、異動の話を何週間も一人で抱えていたことを、ようやく打ち明けたのです。彼女は責めませんでした。ただ、「どうして言ってくれなかったの」と、少し寂しそうに言いました。その声を聞いて、僕は自分が彼女を守っているつもりで、本当は向き合うことから逃げていたのだと気づかされました。
そして...
電話を切ったあと、僕はあの録音をもう一度聞き返しました。発車のメロディと、ホームのアナウンスとざわめき。そこには、何も言えなかった僕の弱さが、そのまま残っているようでした。彼女を心配させたくないというのは、半分は本当で、半分は言い訳だったのだと思います。本当は、「一緒に来て」と頼んで断られるのが怖かった。異動の返事は、これから二人で話して決めることにしました。あの音だけのメッセージを最後の逃げにするために、今度は迷いも不安も全部、ちゃんと言葉にして伝えます。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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