SNSでイクメンを演じ続けた俺が、自分で撮った一枚の写真で失敗した話
たまに抱けば父親だと思っていた
職場でも友人の集まりでも、子育ての話になると、俺はうまく輪に入れずにいました。みんなが当たり前にしている育児を、自分はほとんど妻に任せていたからです。だからSNSに息子との写真を載せると、知らない人から「いいパパ」だと言ってもらえるのが、どこか救いでした。その日も、洗い物をしている妻のそばで眠る息子を見て、俺は思いつきました。「ちょっと抱っこさせて、写真撮るから」。窓を背に息子を抱え、何枚か撮ると、すぐに妻へ返します。たまに少し抱けば父親なのだと、本気でそう思っていたのです。
「育児は協力してます」の一言
投稿に添える言葉は、すぐに決まりました。「育児に協力してます」。送信すると、「素敵なパパ」「理想のご主人ですね」と、次々にコメントがつきます。その一つひとつが、自分を認めてもらえた証のようで、何度も読み返しました。本当は、授乳も哺乳瓶の用意も、ほとんど妻がやっていることを、俺は知っていました。それでも、写真の中でだけは立派な父親でいられる。嘘をついている自覚はないまま、見られたい自分だけを切り取って、世界に向けて差し出していたのです。
写真の隅に映っていた現実
反響を眺めていると、一件のコメントが目に入りました。「後ろのガラスに映ってるの、奥さんですか?」。言われて初めて、俺は自分の写真をよく見ました。背後の窓ガラスに、部屋の明かりで室内がうっすら映り込んでいたのです。そこにいたのは、シンクの前で背中を丸め、洗い物を続ける妻の姿でした。笑顔の俺の、すぐ後ろで。俺が「協力」と書いたその裏で、妻がずっと続けてきたものが、一枚の写真にそのまま写っていたのです。称賛のコメントを、もう誇らしいとは思えませんでした。
そして...
スマホを置いて、俺は洗い物をしている妻のところへ行きました。「ごめん。ずっと君に任せきりだった」。口にしてみて、これまで一度も言ってこなかった言葉だと気づきました。妻は写真を消せとは言いませんでした。その沈黙のほうが、どんな言葉よりこたえました。次の日から、俺は哺乳瓶を洗い、息子の支度をするようになりました。カメラを向けるためではなく、ただの父親として。あの写真の片隅が教えてくれたのは、見られるための育児には、何の意味もないということでした。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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