予約を当日に取り消した彼が、知らない名前の花束を受け取っていた
楽しみにしていた約束が消えた
付き合って二年。記念日のディナーは、一カ月も前から彼が予約してくれていました。お店の名前を教えてくれたとき、彼は少し得意げで、私もその日が来るのを指折り数えていたのです。
だからこそ、届いたメッセージが信じられませんでした。「ごめん、今日は行けなくなった。予約も取り消した」。理由を聞いても、返ってくるのは曖昧な言葉ばかり。仕事だとも、体調だとも言いません。何度かやりとりを重ねても、彼は肝心なところをはぐらかし続けました。
玄関先で見た花束
連絡だけでは気持ちが収まらず、私は彼のマンションへ向かいました。顔を見て話せば、きっと何かわかるはず。そう思っていたのです。
エントランスにたどり着くと、ちょうど彼が宅配の荷物を受け取っているところでした。腕に抱えていたのは、大きな花束。私に気づいた彼は、なぜかそれを背中に隠すようにしました。受け取りの伝票がちらりと見え、そこには私の知らない名前が書かれていました。「その花、誰からなの」。問いかけると、彼は目を伏せて「ごめん、今は言えないんだ」とだけ答えました。
決めつけてしまった私
知らない名前、隠される花束、言えない理由。頭の中で、いちばん知りたくない答えが組み上がっていきました。他に大切な人がいるんだ。記念日を取り消したのも、そのためだったんだ。
それ以上問い詰めることができず、私はその場を離れました。帰り道、何度もメッセージの画面を開いては閉じました。画面の文字がにじんで、うまく読めませんでした。駅のホームのベンチに座り込んだまま、なかなか腰を上げられませんでした。彼を信じたい気持ちと、見たものが消えてくれない苦しさが、ずっとせめぎ合っていました。
そして...
後になって、彼がすべてを打ち明けてくれました。「予約の日を、俺が間違えてた」。情けなくて言い出せなかったのだと、彼は何度も謝りました。あの伝票にあったのは、二人きりのときだけ彼が私を呼ぶ、あの呼び名だったのです。ローマ字で書かれていて、一瞬では自分の呼び名だと結びつきませんでした。
知らない名前だと決めつけて部屋を飛び出した自分を思うと、今でも少し恥ずかしくなります。それでも、隠されると不安になることを、正直に伝えてほしかったことを、ちゃんと言葉にできました。すれ違った分だけ、これからは確かめ合っていける。そう思える記念日になりました。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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