汗のにおいを気にして制汗スプレーを使い続けた僕→人混みで本当に迷惑だったものに気づいた話
においだけは、絶対に嫌だった
僕は人より汗をかきやすく、夏になると自分のにおいが気になって仕方がありませんでした。以前、すれ違いざまに顔をしかめられたことがあって、それからは制汗スプレーが手放せなくなったのです。
真夏の野外フェスは、まさに僕にとっての鬼門でした。人とぶつかるほどの人混みで、汗が噴き出してくる。迷惑をかけてはいけない一心で、僕はポーチからスプレーを取り出し、首筋にも腕にも何度も吹きつけました。
これで安心だと、その時の僕は本気で思っていたのです。
「エチケットでしょ?」と返したけれど
スプレーを使い続けていると、後ろにいた女性に声をかけられました。
「すみません、スプレーを少し控えてもらえませんか」
やわらかい言い方でしたが、僕はとっさに身構えてしまいました。せっかく気をつかっているのに、なぜ責められるのか。僕は振り返って、「エチケットでしょ?」と言いました。さらに「汗のにおいよりいいでしょ」と重ねます。
自分のほうが正しいと、信じて疑いませんでした。けれどその声をかけてきた女性のとなりで、別のひとりがうつむいたまま、その場にしゃがみ込んでしまったのです。
まわりの動きで、見えてきたもの
その途端、まわりの人たちが動き出しました。「こちら、日陰が空いてますよ」と場所を空ける人、うちわで風を送る人、「お水、飲めそうですか?」とペットボトルを差し出す人。
誰もが、しゃがみ込んだ女性のために自然と体を動かしていました。僕はスプレーを持つ手を下ろしたまま、その輪の外に立ち尽くしていました。
強い香りがこもった人混みで、いちばん空気を悪くしていたのは、ほかでもない自分だったのかもしれない。迷惑をかけたくないと言いながら、僕は目の前の人をまったく見ていなかったのです。
そして...
日陰で休んでいた女性は、少しずつ顔を上げて、まわりの人にお礼を言っていました。大ごとにならずにすんで、心からほっとしました。
家に帰ってからも、あの輪の中に入れなかった自分のことを何度も思い返しました。エチケットという言葉を盾にして、僕は自分を守っていただけだったのだと思います。本当に必要だったのは、スプレーの量を増やすことではなく、となりにいる人の様子に気づくことでした。
次に同じ場所に立ったら、まず深呼吸をして、まわりを見渡せる自分でいたい。そう思えたことだけが、今回の小さな救いです。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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