「たかが傘で大げさ」と言ってしまった私→友人の大切な傘だと知り、雨の中で固まった
傘を忘れた、雨の出口で
自分の傘を忘れたと気づいたのは、帰ろうとしたときでした。雨は本降りで、駅まで歩けば確実にずぶ濡れになります。傘立てには、何本かの傘が残っていました。その中に、淡い色のきれいな傘が一本あったのです。誰のものだろうとは思いましたが、私は深く考えないことにしました。同じような傘はいくらでもある。少し借りて後で返せばいい。そう自分に言い聞かせて、その傘を手に取ったのです。
「たかが傘で大げさ」と、ごまかした私
傘を広げて歩き出したところで、後ろから友人の声がしました。振り返ると、「それ、私の傘だと思う」と言うのです。心のどこかで、やっぱり、と思いました。それでも、認めてしまえば、自分が人の傘を勝手に持ち去ったことになります。その気まずさから逃げたくて、私は「たかが傘で大げさ」と言ってしまったのです。同じような傘なんてどこにでもある、気のせいではないか、と。本当は、その淡い色の傘がていねいに使われているのに、気づいていました。
小さなチャームが、突きつけたもの
友人は傘の持ち手を指さして、「持ち手のチャーム、私が付けたものなの」と言いました。そこで揺れていたのは、お店では見かけない、手作りの小さなチャームです。同じような傘、と言い張ってきた私の言葉が、その場で力を失っていきました。これはただの量産品ではなく、誰かが大切にしてきた一本だったのです。私はうつむいて、自分のごまかしの大きさを思い知りました。
そして...
私は傘を返して、ごめん、と頭を下げました。本当は、傘立ての前で手に取った時から、それが自分のものではないとわかっていました。でも、ずぶ濡れになりたくない、その小さな気持ちひとつで、人の大切なものを軽く扱ってしまった。たかが傘、と言った自分が、いちばん恥ずかしくなりました。今でも雨の日になると、あのチャームの揺れを思い出します。次はきちんと、自分の傘を持って出かけようと思います。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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