アルバムの駅の写真を抜いたのは僕でした。言えない理由のせいで、彼女を不安にさせていた数週間
アルバムから抜いた写真
彼女と付き合って、三年になります。旅行のたびに、降り立った駅の看板を二人で撮るのが、僕たちの習慣でした。その一枚一枚を、彼女は大事にアルバムへ貼っていたのです。記念日が近づいたある日、僕はそのアルバムから、駅の写真だけをそっと抜き取りました。海も山も温泉も、行き先の名前が写っているのは、決まって駅の写真です。それを全部集めれば、二人がこれまで旅してきた場所が、すべてわかる。ある計画のために、どうしても必要だったのです。
言えなかった「なんとなく」
ところが、彼女はすぐに気づきました。「駅のだけ抜けてるよね。どうして?」と聞かれたとき、僕はとっさに「なんとなく」とだけ答えてしまいました。本当のことを言えば、せっかくの計画が台無しになる。そう思うと、うまい言葉が見つからなかったのです。「なんとなくで抜いたりする?」と重ねて聞かれても、「ちょっと用事があって」とごまかすのが精一杯でした。彼女が納得していないのは、その表情を見ればわかります。それでも僕は、本当のことを言い出せませんでした。
喜ばせたかっただけなのに
僕が計画していたのは、二人が旅した駅をすべて並べた、路線図のようなポスターでした。専門の店に頼んで、行き先の駅名を一つずつ印刷してもらう。最後の駅には、これからもよろしく、という言葉を入れるつもりでした。ところが、注文した品はなかなか仕上がってきません。
その間、抜いた写真を戻すこともできず、彼女の不安だけが日に日に大きくなっていきました。喜ばせたい一心だったのに、僕は彼女を、数週間も悩ませてしまっていたのです。心配しないでと一言伝えるだけでよかったのに、それすらできない自分が情けなくなりました。
そして...
迎えた記念日、僕は仕上がったポスターを彼女に手渡しました。二人で降り立った駅が、一本の線でつながっています。彼女はそれをしばらく見つめてから、「びっくりさせないでよ」と、ようやく笑ってくれました。あの駅の写真は、僕にとって、二人で歩いてきた道のりそのものでした。それを消すどころか、ずっと残しておきたかったのです。けれど、黙って抜き取ったせいで、彼女に余計な心配をかけてしまった。これからは隠しごとをする前に、まず一言伝えよう。彼女の笑った顔を見ながら、僕はそう心に決めました。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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