どっちも本気で、どっちも選べなかった→俺のスマホが、駅で待つ人に全部を伝えた
鳴った通知を、伏せたままにした
画面に表示されていたのは「もう駅着いたよ」という、待ち合わせ場所からのメッセージでした。本当は、その人と会う約束をしていたのです。けれど目の前には同棲相手がいて、俺は返信を打てないまま、既読だけをつけてしまいました。
返信すれば隣の相手にあやしまれる。かといって出かける口実も、とっさには思いつきません。たいしたことないふりをしてスマホを伏せながら、俺は二人に嘘をつき続けてきた自分のことを考えていました。
戻ったとき、スマホは相手の手の中にあった
返せないまま画面を伏せて三十分ほど経ったころ、飲み物を取りに立ちました。ほんの数分のことでした。戻ると、同棲相手が俺のスマホを持って、画面を見つめていました。そこには、相手が待ち合わせの人へ送ったばかりの文面が残っていました。「突然ごめんなさい。これを打っているのは、あなたが待っている人ではありません」。そして、「私、その人の同棲相手です」。
同棲相手は俺を見て、「どっちが本気だったの」とだけ言いました。俺はその問いに答えられないまま、奪われたスマホの画面を見ていました。
どちらも欲しくて、どちらにも向き合わなかった
同棲相手とは、ここ最近どこかすれ違っていて、待ち合わせの人といるときだけ、素の自分でいられる気がしていました。それでも、長く一緒にいた相手を手放す勇気は持てませんでした。
待ち合わせの人から一度だけ「私たちって、付き合ってるんだよね?」と聞かれたことがあります。あのとき俺は「そういうの、今はっきりさせなくてもいいじゃん」と笑ってごまかしました。言葉にしなければ、責任を負わずにいられる。そう思っていたのです。曖昧さに甘えていたのは、ほかでもない俺のほうでした。
そして…
同棲相手は荷物をまとめて部屋を出ていきました。待ち合わせの人からは、あれきり一度も返信はありません。当然のことだと思います。
俺は二人に誠実なつもりで、どちらにも誠実ではありませんでした。どちらも本気だと言い訳をしながら、結局はどちらも傷つけただけでした。連絡を入れようとアプリを開いては、そのまま閉じる。それを何度も繰り返すうちに、画面の明かりだけが部屋に残っていきました。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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