「深い意味はないよ」とごまかした僕のアイコン候補には、言えなかった思い出が詰まっていました
相談されて
「アイコンの候補、いくつか選んでくれない?」
彼女からそうお願いされたとき、僕はうれしくて、つい張り切ってしまいました。ふつうなら、彼女がきれいに写っている一枚を選べばよかったのかもしれません。
でも僕がフォルダから選んだのは、それとはまるで違う写真ばかりでした。理由は、自分でもちゃんとわかっていたのです。
それぞれの一枚
一枚目の自動販売機は、初めてふたりで出かけた帰り道に撮ったものです。冷え込んできたころ、僕がそこで温かい飲み物を買って渡すと、彼女が両手で缶を包んで笑ってくれました。
二枚目の鳩は、公園を歩いていたとき、地面をついばんでいた一羽を撮ったもの。彼女が驚いて腕をつかんだのが忘れられません。
三枚目のたい焼きは、彼女が決まって頭からかじるのがかわいくて、その食べかけをこっそり撮った一枚。
言えなかった理由
彼女に「ねえ、この自販機の写真は何?」と聞かれたとき、本当は一枚ずつの思い出を伝えたかったのです。でも、いざ文字にしようとすると照れくさくて、「深い意味はないよ」とごまかしてしまいました。
彼女が何度も尋ねてくるので、最後にやっと「全部、好きな写真だっただけ」とだけ答えました。好きなのは写真ではなく、そのとき隣にいた彼女なのに、それを伝える勇気が出ませんでした。
そして...
しばらくして、彼女がアイコンを自販機の写真に変えていることに気がつきました。たくさんの候補のなかで一番地味な一枚を選んでくれたことが、なんだかうれしかったです。
いつか、あの写真の一枚ずつに込めた思い出を、ちゃんと言葉にできたらと思います。次に自販機の前を通ったら、今度こそ照れずに、あの帰り道のことを話してみるつもりです。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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