好きな人との約束に友達を呼んだ僕。2人きりが怖かっただけだと、彼女には言えなかった
2人きりが、急に怖くなって
彼女とは、友達と呼ぶには近く、恋人と呼ぶにはあと1歩、そんな関係が続いていました。新しくできた水族館に2人で行こうと決めたとき、僕は飛び上がりたいくらい嬉しかったのを覚えています。けれど、その日が近づくにつれて、別の気持ちがふくらんでいきました。2人きりで、もし会話が続かなかったら。もし、僕だけが特別な約束だと思っていたら。考えるほど、自信がなくなっていったのです。逃げ道がほしくて、僕は友達に声をかけました。そして彼女に送ったのが、あのメッセージです。「今度の約束さ、友達も誘っちゃった。みんなで行ったほうが楽しいかなと思って」。楽しいかな、なんて、本当は自分でも信じていませんでした。
にぎやかさの裏側
待ち合わせの場所に、僕は2人の友達と先に着いていました。彼女が来たとき、僕はいつもより大きな声で手を振っていたと思います。緊張を見せたくなくて、必要以上に明るくふるまっていたのです。水族館の中では、わざと友達との会話を盛り上げました。
そうしていれば、2人きりの気まずさを考えずにすむ気がしたのです。でも、ふと振り返ると、彼女は半歩うしろで、控えめに笑っているだけでした。その横顔を見るたびに、自分のしたことを後悔しはじめていました。それでも僕は、「この後、みんなでご飯も行こうよ」と口にしてしまいました。2人になる時間を、もう少し先延ばしにしたかったのです。彼女は「うん、いいね」と答えました。その声が、いつもより少し小さいことに、僕は気づいていました。
言えなかった一言
友達の2人が、お土産売り場のほうへ先に歩いていったとき、ようやく彼女と2人きりになりました。今しかない、と思いました。本当は2人で来たかったこと、急に怖くなって逃げてしまったこと、ちゃんと伝えたかったのです。彼女のほうを見て、口を開きました。けれど、出てきたのは感想という、自分がなさけないです。
せっかくの2人の時間を、僕は自分の臆病さでつぶしてしまったのです。彼女は小さくうなずいただけでした。その表情から、僕がどれだけがっかりさせたかが伝わってきて、それでもまだ、本当のことは言えないままでした。
そして...
家に帰ってから、僕は何度もメッセージを打ちました。「本当は2人で行きたかった。怖くて逃げただけなんだ」。けれど、送信ボタンを押せないまま、その文章を消してしまいました。情けない話です。
彼女を不安にさせたのも、楽しみにしてくれていた時間を台無しにしたのも、全部、自分が傷つきたくなかったからでした。誰よりも自分を守ろうとして、いちばん大事にしたい人を、いちばん遠ざけてしまったのです。それでも、このまま終わりにはしたくありません。今度は、2人で行こうと自分から言おうと思います。逃げ場のない約束を、ちゃんと果たせる自分になりたいから。打ち直した文章は後は送信ボタンを押すだけです。
(20代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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