冷蔵庫のラベルを見るたび昔のシェア生活がよみがえる。彼女に言えないまま、僕は全部はがしてしまった
気づいたら、はがしていた
彼女と暮らし始めてから、家の中はどんどん整っていきました。冷蔵庫の中も、調味料にも作り置きの容器にも、ラベルライターで名前や日付がきれいに貼られています。ありがたいことだと、頭ではわかっていました。
それなのに、彼女が出かけている間に、僕はそのラベルを一枚ずつはがしていたのです。瓶のふちにのりの跡が残っても、途中でやめることができませんでした。自分でもおかしなことをしている自覚はあったのに、止められなかったのです。
口をついて出た名前
彼女が帰ってきて、冷蔵庫の前で僕に聞きました。「ねえ、冷蔵庫のラベル、どうしてはがしたの」責める口調ではありませんでした。だからこそ、何と答えればいいのかわからなかったのです。気づけば僕は、こんな言葉を口にしていました。「前に一緒に住んでたナオが、ああいうの全部に貼る人で」彼女が「ナオって、誰のこと」と聞き返してきます。けれど、その先をどう話せばいいのか見つからず、僕は「ごめん、うまく言えない」と言って、その場を離れてしまいました。
あの家での暮らし
ナオというのは、昔つき合っていた人ではありません。社会人になりたての頃、何人かでルームシェアをしていた相手です。冷蔵庫も棚も、家じゅうのものすべてに名前と細かいルールのラベルを貼られていました。「これは勝手に使わないで」「使ったら元の位置へ」。自分の家のはずなのに、ずっと誰かに見張られているようで、くつろげた記憶がありません。彼女のラベルに悪気がないのはわかっていました。それでも、あの頃の借り物のような暮らしが重なって、見るのがつらかったのです。
そして...
このままではいけないと思い、僕は彼女に打ち明けました。あの同居生活のこと、ラベルを見るとあの窮屈さがよみがえってしまうこと。話し終えると、彼女は少し考えてから言いました。「だったら、最初にそう言ってよ」そのとおりでした。黙ってはがして、彼女を戸惑わせていたのは僕のほうです。それから僕たちは、どこに何を貼るかを二人で決めるようになりました。同じラベルでも、二人で選んだものなら、不思議とこの家がちゃんと自分の居場所に思えるのです。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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