「お前さん、母さんの若い頃に似てるなあ」義父の一言で、私と義母の距離が変わった日
3年経っても縮まらない距離
義母はいつも穏やかでした。私の手土産にお礼を言い、食事中も気を遣ってくれます。けれど、それ以上の踏み込みはありません。料理を褒めれば「ありがとう」、近況を尋ねられても「そう」と。視線は私の手元や夫の方ばかりで、私の目を見て話されたことはほとんどなかったのです。
何か悪いことをしたのだろうか。私の何が気に入らないのだろうか。考えれば考えるほど、義実家への道のりが少し遠く感じられるようになっていきました。
仏壇を見つめて、義父がつぶやいた
その日の食卓も、和やかに進んでいきました。私が義父にビールを注ぎ、義母が漬物の皿を回す。形式的だけれど、それなりに穏やかな食事です。
ふと、義父が仏壇の方に視線を向けて、しみじみとつぶやきました。
「お前さん、母さんの若い頃に似てるなあ」
亡き義祖母のことだと気づいて、私は「ありがとうございます」と頭を下げます。義父は嬉しそうに「写真があるんだよ、母さんの若い頃の。今度見せてやろう」と続けました。
何気ない団欒のひとときのはずでした。けれど、向かいに座っていた義母の表情が、ほんの一瞬だけ陰ったように見えたのです。義父はそれに気づかず、お酒を口に運んでいました。
台所で初めて聞いた、義母の声
食後の片付けは、いつも私と義母の役割でした。といっても、義母は手早く動き、私は皿洗いを任されるだけ。会話らしい会話はほとんどありません。
しかし、その日は違いました。食器を洗う私の隣で、義母が手を止めて、エプロンの裾を握ったまま俯いていたのです。やがて、ぽつりと声が落ちました。
「ごめんなさいね、ずっと冷たくして」
蛇口の水を止めて、私は義母の方に向き直りました。義母は私を見ずに、窓の外を見つめたまま続けます。
「私、自分が嫁いできた頃を思い出してしまって。あの頃のお義母さん、本当に怖い人だったの。何をしても認めてくれなくて」
声に湿りが混じっていました。「あなたに辛い思いをさせたくなくて、距離を置いてしまったの。私みたいに、あなたを苦しめたら嫌だと思って」
3年間、私が義母に避けられていると思っていたものの正体が、ようやく形を持ち始めた瞬間でした。
そして...
「お義母さん」私は無意識に手を伸ばしていました。
義母の濡れた手の上に、自分の手を重ねます。義母は驚いたように顔を上げ、それからゆっくりと私を見ました。お義母さんと、ちゃんと目が合ったのは、3年で初めてのことでした。
「私こそ、ずっとお話ししたかったんです」私の声が涙でかすれたとき、義母も小さく笑いました。それは、これまで見たどの笑顔より、義母自身の表情に見えました。
帰りの車の中で、私は夫に何も話しませんでした。義父が口にしたあの一言が、義母と私のあいだに何を運んできたのか、まだ言葉にはできなかったからです。ただ、次の集まりが少し待ち遠しい気がする、それだけは確かでした。
(30代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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