「むしろ感謝してほしい」3枚までを無視しシールを独り占めする女性客→列に並ぶ子どもの思いがけない一言
足元に広げた紙袋と、抱え込んだ山ほどのシール
その日、私は前から欲しかった限定シールを目当てに来ていました。人気のシリーズらしく、特設の棚の前には何人もの人が順番を待っています。
ところが先頭の女性は、足元に紙袋をいくつも広げ、まるで自分の場所のように陣取っていました。彼女は棚からシールを両手でごっそりとつかんでは紙袋へ詰め込んでいきます。
「お一人様3枚まで」と貼り紙があるのに、十枚、二十枚と抱え込んでも、やめる気配はありません。気づけば、棚のシールはもうすかすかです。
近づこうとした小さな女の子に、女性は「ちょっと、どいてくれる?」と片手で払うしぐさをします。後ろに並ぶ人たちは、ただ困った顔で見ているしかありませんでした。
「むしろ感謝してほしい」
このままでは、お目当ての分どころか、棚のシールがすっかりなくなってしまう。そう思った私は、思いきって声をかけました。
「あの、お一人様3枚までみたいですよ」
できるだけ控えめに伝えたつもりです。すると女性は、悪びれるどころか胸を張って言いました。
「私みたいにまとめて買う人がいるから、このシリーズは続いてるの。むしろ感謝してほしいくらい」
自分は親切でやっているのだ、とでも言いたげな口ぶりです。私はあきれて、列の自分の場所へ戻りました。周りの人たちも、顔を見合わせてため息をついています。
並んでいた子どもの、たったひとつの問いかけ
そのときでした。さっき女性に払いのけられた小さな女の子が、列のあいだから、ぐるりとあたりを見回したのです。その手には、握りしめた五百円玉。たったひとつのシールを楽しみに来たのでしょう。
女の子は、女性をまっすぐ見上げて言いました。
「でも、みんなこまったお顔してるよ。ありがとうって、いってる人、いないよ?」
責めるでもなく、ただ見たままを口にした、素直な疑問でした。それまで黙っていた人たちが、いっせいにうなずきます。あちこちから、そうだという声がもれました。感謝してほしいと言ったばかりの女性の顔は、みるみる真っ赤になっていきます。
あわてて紙袋を抱えた拍子に、腕いっぱいのシールが床いっぱいに散らばります。それでも女性は、ひとつも拾おうとはしません。集まる視線から逃げるように、半ば駆け足で人混みへ消えていったのです。
そして...
女性がいなくなった台では、散らばったシールを、近くの人たちがだれからともなく拾い集めていました。あの女の子は、大事そうにシールを選んでいます。「やったあ」とはしゃぐ姿に、列のあちこちから小さな笑い声がもれます。
大人が何人も言いそびれていたことを、あの子はただ素直に口にしただけ。順番を守る、みんなで分け合う。あたりまえの約束のあたたかさを、私はあらためて思い出した気がします。
(20代女性・販売員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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