女性整備士に担当変更を頼んだ私が、半年後にあの人を指名するようになった理由
父の言葉が刷り込まれていた私
私は長年、地元の整備工場に愛車を見てもらっています。亡くなった父も同じ工場を使っており、「車のことは男に任せろ」が口癖でした。父にとって整備士は男性であるのが当たり前で、私もそれを疑ったことがありませんでした。
ある春の朝、いつものように定期点検で工場を訪れたとき、受付から「本日はこちらの者が担当します」と紹介されたのは、まだ若い女性整備士の方でした。ツナギは着ているものの、20代半ばに見えました。私の頭に最初に浮かんだのは、父のあの口癖だったのです。「車のことは男に任せろ」。長年染み付いていた感覚が、すぐには切り替わりませんでした。
「男性の整備士の方に変えてもらえる?」と頼んだ朝
少し悩んだ末、私は受付に向き直って、その若い整備士の方に頭を下げました。
「申し訳ないけど、男性の整備士の方に変えてもらえる?」
口にしてしまってから、自分でも嫌な気持ちになりました。彼女の対応に何ひとつ問題があったわけではないのです。ただ「女性だから」という理由だけで、私は信用できないと告げてしまった。彼女は表情を崩すこともなく、「承知いたしました。少々お待ちください」とだけ言って、受付に戻っていきました。
代わりに対応してくれた年配の男性整備士の方の作業に、特に不満はありませんでした。けれど、車を引き取って帰る道で、なぜか自分の中に小さな違和感が残ったのです。あの一言は、本当に必要だったのだろうか、と。
半年後、自分から指名した理由
それから半年が経った秋。次の点検時期が近づいてきたので、私は工場のホームページを見ていました。整備士の紹介ページに、あのときの女性整備士の写真が載っていました。「お客様への説明を大切にしています」というコメントが添えられていました。
口コミ欄を読むと、「写真付きの説明書がわかりやすかった」「自分の車のことが初めて理解できた」という声が並んでいました。中には「指名予約が取りにくくなった」と書いている方もいたのです。
迷った末、私はあのときの彼女を指名で予約しました。当日、整備を終えて引き渡しを受けたとき、説明書類の丁寧さに驚きました。長年見てもらっていた前任の方の説明とはまた違う、こちらの理解に寄り添う説明の仕方でした。私は受付で、彼女に頭を下げました。
「誰よりも仕上がりが丁寧。ずっとあなたにお願いしたい」
そして...
後日、工場の前を通ったときに知り合いの整備士の方から聞いた話があります。あの翌日の朝礼で、工場長が一言だけ全員に伝えたそうです。
「技術に性別は関係ない」
私はそのまま会社に向かいながら、半年前のあの朝の自分を思い返していました。あの日「男性に変えて」と口にした私と、半年後に「あなたにお願いしたい」と頭を下げた私。両方が同じ私です。父の口癖は、もう自分の中で更新されつつある。古い常識と、新しい常識が、私の中でゆっくりと入れ替わっていく途中なのだと思いました。
(40代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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