仕事帰りに息子を連れてスーパーへ。「親は何してるの」と聞こえた気がした夕方の話
走り回る息子と、追いつかない私
日勤を終えて、保育園にお迎えに行ったあとのその日も、私はスーパーに息子を連れて入りました。3歳の息子は、保育園で抑えていた何かを発散させるかのように、店内に入った瞬間から走り出してしまいました。「待って」と声をかけながら追いかけても、息子の足の方が速い。
野菜売り場からお菓子売り場へと駆け抜けていく息子に、何度も「すみません」と頭を下げながら、私は息を切らせていました。
そのとき、後ろのほうから「親は何してるの」と、誰かの声が聞こえた気がしました。本当にそう言ったのかはわかりません。私の頭の中だけで響いていたのかもしれません。それでも、振り返る気力もありませんでした。
ようやく追いついて
ようやく息子を捕まえて、屈んで目を合わせました。
「走らないでって言ったでしょ」
声を荒げる元気は、もう残っていませんでした。息子は私の腰にしがみつきながら、「ママ、お腹空いた」と上目遣いで見上げます。
「ごめんね、お母さん仕事終わったばっかりで」本当は息子が悪いわけではないと、わかっていました。一日中、お母さんと離れて保育園で頑張ってきた息子に、もっと早く迎えに行ってあげたかった。もっとゆっくり遊んであげたかった。それができない自分が、何より申し訳ありませんでした。
余裕がないままレジへ
必要なものだけをカゴに入れて、レジに並びました。レンジで温めるだけの惣菜と、息子の好きなおにぎり、それから保育園で頼まれていたおむつのパック。買うものを増やす余裕はありませんでした。
早く家に帰って夕飯の準備をして、お風呂に入れて、寝かしつけて。次のシフトまでに少しでも休まなければ、明日が回らない。そのことばかりが頭の中をぐるぐるしていました。横を見ると、息子はもうカゴの取っ手にぶら下がって眠そうにしていました。
そして...
レジを通り抜けて、駐車場まで歩く間、私は息子の小さな手を握っていました。「お利口にできたら、お家に帰ってアイス食べようね」そう言うと、息子は半分眠りながら、ふにゃりと笑いました。
家に帰って、惣菜を温めて、息子の口を拭いて、布団に転がして。一通りを終えてソファに座り込んだとき、ようやく自分の白衣の襟が汗で湿っていることに気づきました。
「親は何してるの」と聞こえた気がしたあの声に、もし答えるなら、こう言うのかもしれません。「親は、ここで、ぎりぎりやっています」と。
明日も日勤です。けれど今夜は、息子の寝顔を少しだけ長く見つめてから、自分も眠ろうと思いました。
(30代女性・看護師)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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