『弟にばかりお金をかけて』と母を恨み続けた私が、結婚を機に実家で見つけた2つの通帳
弟ばかりに注がれていたお金
高校3年生のとき、進路相談の場で母は「家計のことを考えて、できれば国公立にしてほしいの」と私に頭を下げました。私はその言葉を受け入れ、必死で勉強して公立大学に進んだのです。新しい服も、入学祝いの腕時計もありませんでした。
それから3年後、弟は当たり前のように私立大学を選びました。さらに大学3年で「留学したい」と言い出し、両親はそれも認めて貯金を切り崩しているようでした。私は耐えきれず、ある日の夕食の席で母に詰め寄りました。「弟にばかりお金をかけて、私には何もしてくれなかったよね」。母は何も言い返さず、ただうつむいていました。その日から、私は両親と少しずつ距離を置くようになっていったのです。
結婚を控えて戻った実家
それから10年以上が経ち、私は春に結婚を控えていました。新居に私物を運ぶため、土曜日に久しぶりに実家へ帰省したのです。母は「全部好きに持っていきなさい」と、段ボールとガムテープをきれいに揃えて待っていてくれました。私は短くうなずいて、二階の自室に上がりました。
机、本棚、クローゼットの順に片付けていきました。母は台所で夕飯の準備をしているようで、ときどき包丁の音が聞こえてきます。最後にデスクの引き出しを開けたとき、一番奥に見覚えのない厚みのある封筒があるのに気づいたのです。
引き出しの奥にあった2冊の通帳
封筒の中には、私の名前が印字された通帳が入っていました。ページをめくると、私が大学に入った年から、毎月一定の金額が振り込まれていたのです。表紙の裏には母の字で「姉の結婚資金・夢の応援金」と書かれていました。
その隣に、もう一冊。弟の名前の通帳でした。同じ日付に、同じ金額。一円も違わずに積み上げられていたのです。立ったまま、ページの数字を何度も指でなぞりました。背後で襖が開く音がして、母が部屋に入ってきます。私の手元を見ると、母は一度だけ間を置いてから、ゆっくりと口を開きました。「ずっと同じだけ愛してたのよ」。
そして...
母は私の隣に座り、当時のことを少しずつ話してくれました。「公立を選んでくれたあなたに、何も返せていないのが本当に申し訳なくて」「言葉にしたらかえって嫌な思いをさせると思って、ずっと言えなかったの」。私は通帳を抱えたまま、「ごめんね」と「ありがとう」を交互に繰り返していました。
長い間、抱えていた恨みが、その夕暮れにほどけていきました。結婚式で読むつもりだった母への手紙を、私はその夜に書き直しました。見えない場所で守られていた愛情に、20年もかかってようやく気づけた自分のことを、これからの人生でゆっくり許していくつもりです。
(30代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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