転売目的で新作カードを買い占めたオレに、店員が突きつけた販売ルールと、後味の悪さ
早い者勝ちだと思っていた
新作の発売日は、オレにとって稼ぎ時でした。人気のカードをまとめて押さえ、あとで高い値段で売る。それを当たり前のように繰り返してきたのです。
その日も開店と同時に売り場へ駆け込み、誰よりも早く棚を目指しました。後ろから「何が当たるかな」と弾んだ子どもの声が聞こえた気もしましたが、振り返りはしませんでした。
親子がこちらを見ているのに気づくと、オレは「全部オレが買うから」と言い放ち、手を動かし続けました。早い者勝ちだ、文句を言われる筋合いはない。そう自分に言い聞かせていました。
棚がほとんど空になったころ、視界の端に小さな手が映りました。何もなくなった陳列棚に、ためらいがちに伸びていく子どもの手です。気づいてしまったぶんだけ、オレは見なかったことにして、残りをカゴへ放り込みました。
突きつけられた販売ルール
カゴがいっぱいになりかけたころ、店員が小走りで近づいてきました。オレのカゴをちらりと確認すると、はっきりした声で言ったのです。
「申し訳ございません。こちらの商品は、お一人さま三点までとさせていただいております」
続けて、「本日は、お子さま優先での販売です」と。「は?そんなの聞いてない」と、思わず声を荒げました。それでも店員は笑顔を崩さず、一歩も引きません。周りの視線が一斉にこちらへ集まるのがわかりました。
振り返った先にいた親子
結局、オレが手にできたのは三点だけ。舌打ちまじりに捨て台詞を吐いて、その場を離れようとしました。ところがレジの方へ目をやると、さっきの男の子が、補充されたばかりのカードを大事そうに選んでいたのです。
母親の隣で無邪気にはしゃぐその横顔は、まぶしいくらいに嬉しそうでした。オレが空にしかけた棚の前で、あんな顔ができる子がいる。そう思うと、勝ち負けとは違う、ざらついた感覚が後を引きました。
そして...
転売そのものが悪いとは、今でも思っていません。早い者勝ちの世界で、立ち回りがうまいだけだ。そう割り切ってきたはずでした。
それでも、見なかったことにしたはずのあの子の手が空っぽの棚に伸びていた光景だけは、なかなか頭から離れませんでした。オレが押さえた三点は、結局その日のうちに売れました。けれど、思っていたほどの達成感はありません。
次の発売日も、オレはまた同じ場所に並ぶのでしょうか。レジへ向かう親子の後ろ姿が、やけに長く目に残りました。
(30代男性・自営業)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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