「老人ホームに入れるなんて冷たい」と親戚に責められた私→父が職員に話した本音
親戚の集まりで投げかけられた言葉
正月明けの親戚の集まりでのことです。叔母が私の隣に座り、グラスを置きながら口を開きました。「ねえ、お父さんのことなんだけど」。何かを言いたそうな前置きに、嫌な予感がしました。
「老人ホームに入れるなんて冷たい」。低い声でそう言われ、会話が一瞬止まりました。「お父さんが希望したんです」と返しても、叔母は首を振るばかりです。「本当にそんなこと言うわけないでしょ。あなたが楽したいだけじゃないの」。返す言葉が見つからず、私はうつむきました。
父が「ホームに入ろうと思う」と言った日
父がそう言い出したのは、半年前の夏のことです。私の家のリビングで麦茶を飲みながら、父はぽつりと切り出しました。「ホームに入ろうと思うんだ。自分で選んで、自分で決めたい」。
正直、驚きました。父は昔から自分の家を大切にしていた人です。「本当に?無理しなくていいんだよ」と何度も確認した私に、父は穏やかな顔で言いました。「無理してないよ。これが俺の希望だ」。施設のパンフレットも自分で集めていて、私は手続きを手伝っただけ。それでも親戚から責められると、自分が父を追いやったような気持ちになってしまうのです。
職員さんから聞かされた言葉
叔母の言葉が頭から離れず、私は週末に父のいる老人ホームを訪ねました。父はちょうど別の入居者と将棋を指していて、私を見ると軽く手を上げて「もう少し待ってて」と笑顔を見せます。その様子を遠くから見ていると、女性の職員さんが横に来て、お茶を出してくれました。
「お父様、本当に穏やかに過ごされていますよ」。私が頭を下げると、職員さんは少し迷ったような顔で続けました。「お父様、いつもおっしゃっているんです。『娘には娘の人生がある。あの子に縛られてほしくないんだ』って」。思わず職員さんの顔を見つめてしまいました。
そして...
帰り道、駅のホームで電車を待ちながら、職員さんの言葉を何度も思い返しました。父はあの夏の日、「自分で選んで、自分で決めたい」と言いました。あれは父の自尊心の話だとばかり思っていたのです。本当は、私への思いやりがその奥にあったのだと、半年経って初めて気づきました。
親戚にどう思われようと、もう構わない。父が自分で選んだ道で、笑顔で将棋を指している。それで十分なのだと思えました。私は来た道を引き返し、もう一度父の部屋を訪ねました。「お父さんの選択を、私は誇りに思ってる」。そう伝えると、父は照れくさそうに「そうか」とだけ返してくれました。
(40代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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