「絶対コネだよ」と陰口を叩かれた海外駐在。3年通ったオンライン英会話のことは、誰にも話さなかった
給湯室で聞こえてきた陰口
3年前から、私は毎週月曜から金曜まで、朝5時半起きでオンライン英会話を行っていました。新卒で入社したときから国際部門に異動したかったのですが、英語が苦手で、書類選考で何度も落ちていたのです。同期に異動希望を伝えるたび「無理しなくていいよ」と笑われたあの日から、誰にも言わずに通うことに決めていました。
半年前、シンガポール赴任の辞令が出た朝会の後、給湯室で同期の声が聞こえてきました。「英語できないのに海外駐在?」「絶対コネだよ。お父さん、役員じゃなかったっけ」。本当は、父は私が中学のときに小さな会社を辞めて以来、地方で穏やかに暮らしているだけです。何を言われても黙っていることに、私はすでに慣れていました。
5年越しの商談が動いた日
赴任してからの半年は、想像をはるかに超える忙しさでした。それでも、3年間積み上げてきた語学力が、思った以上に支えになりました。任されたのは、本社が5年間アプローチを続けながら一度も契約に至らなかった大手クライアントの開拓です。何度も打ち合わせを重ね、現地スタッフと一丸になって提案を練り直しました。先方の幹部が初めて「進めましょう」と握手を返してくれた瞬間、私は本社のあの朝会の景色を思い出していました。
契約が決まった日、現地スタッフ全員と先方の幹部とで、記念に写真を撮りました。報告のため、その写真を本社の上司にも送付しました。
本社から届いた短いメッセージ
写真を送ってから1週間後、東京の上司から短いメッセージが届きました。「写真、社内の共有ボードに掲示させてもらった。みんな驚いているよ」。そのあとに続いたのは、これまで陰口を叩いていた同期からのメッセージでした。「今度日本に帰ってきたら、ご飯行こう。話聞かせて」「すごいね、本当におめでとう」。
私はメッセージを開いたまま、しばらく窓の外を眺めていました。3年間の早朝の電車、誰にも見せなかったテキスト、いくつもの落胆と踏ん張った夜。あれが、ようやくここで実を結んだのです。
そして...
本社の同期に対して、怒りはありません。ただ、誰にも何も言わずに準備してきた自分の時間が、ようやく自分のものになった気がしました。あの朝会で笑われたとき、もし反論していたら、きっと今のこの景色は見られなかったと思います。シンガポールでの仕事はまだ始まったばかりです。来月からは隣国の拠点との連携も始まります。早朝のオンライン英会話はもう必要ありませんが、3年間そこで身につけたのは、英語よりももっと大切な何かだった気がしています。
誰かに笑われても、自分のやるべきことを黙って続ければ、いつか景色は変わる。私はそれを、ようやく信じられるようになりました。
(30代女性・総合職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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