「うん」しか返ってこない夜が続いた3年。冷めたと思った彼に送った最後の一言
3往復で終わる夜のメッセージ
彼の帰宅は、毎晩のように日付が変わる頃でした。私はベッドに入る前、決まって彼に「おかえり、今日もお疲れさま」と送るのが習慣になっていました。返事は判で押したように同じです。「ただいま」「今日も遅かったね」「うん」。3往復で会話が終わる夜が、半年ほど続いていました。最初は忙しい時期なのだと思っていました。けれど、半年です。3カ月、また3カ月と、同じやりとりだけが続く毎日。返信を打つ手は、いつの間にか機械的になっていきました。
触れたくない不安
休日もスマホばかり見ている彼の横顔を、私はそれとなくうかがうようになっていました。何を見ているのかは聞けません。聞いて「仕事のメール」と返ってきたら、それ以上踏み込めない気がしたからです。友人に相談すると「もう冷めてるんじゃない?」と言われました。
違うと思いたかったのに、否定する根拠が見つかりませんでした。ベッドの上で、彼の名前を画面に出してはトーク履歴を遡るのが、当時の私の癖でした。出てくるのは、ただいま、うん、ただいま、うん。3年付き合った相手とは思えない、短い文字列ばかりでした。
金曜の夜、送ってしまった一言
その夜、彼はまた終電で帰ってきました。「おかえり」と私が送り、「ただいま」と彼が返す、いつもの3往復。けれど私は、続けて打っていました。「最近、私たちあんまり話してないね。もう私たち、終わってるのかな」。
送信ボタンを押した瞬間、画面の文字がにじんで見えませんでした。既読はすぐについたのに、返信は来ません。10分後、彼が帰ってきました。走ってきたのか、ドアを開けた彼は汗だくでした。
そして...
彼は、私が一度も聞いたことのない声で話し始めました。半年前にプロジェクトのリーダーを任されたこと。連日終電で、ミスが続いて上司から責められていること。「『おかえり』だけが、俺の支えだったんだ。ちゃんと返事したかったけど、頭が回らなかった」「冷めたんじゃない。むしろ逆。だから怖かった、ちゃんと言葉にできない自分が。」私はそれを聞いてしばらく何も言えませんでした。
あの毎晩のやり取りは、彼にとって命綱だったのです。「言ってくれてよかった」と、私はようやく返しました。「私もずっと、聞いていいのかわからなかったから」。あの夜から、彼の返事が急に長くなったわけではありません。けれど私は、「うん」のひとことに、ちゃんと意味があったのだと知ったのです。
(20代女性・事務職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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