妻のブログを馬鹿にしていた僕。書籍化を告げる妻の声に、返す言葉が見つからなかった話
最初は微笑ましく見ていたはずでした
妻が数年前にブログを始めたとき、最初は応援していたつもりでした。子育てが落ち着いて、自分の時間を持つきっかけになれば良いと思っていたのです。
書かれているのは献立や節約のことで、内容は本当に他愛のないものでした。けれど続くうちに、妻が夕食後の1時間を必ず机に向ける姿が、なぜか落ち着かなく感じるようになっていきました。
妻だけが家の外側に何か繋がりを作っている気がして、自分はそこに入れない感覚がありました。今思えば、ただの嫉妬だったのだと思います。
「誰も読んでないよ」と言ったあの夜
ある夕食の時、テレビを見ながら何気なく口にしてしまいました。
「ブログなんて誰も読んでないよ」
妻が答えないので、もう一言。「誰も読んでないのに何が楽しいの」妻は手を止めずに「楽しいよ」とだけ答えました。
娘が僕と妻の顔を見比べていました。あの時の娘の表情が、後になって何度も思い出されました。妻は何も言い返さず、その夜もいつも通り机に向かいました。
僕はリビングのソファでテレビを観ながら、なぜか気まずさだけが残って、しばらくチャンネルを変えられませんでした。
画面に映っていた一通のメール
それから1年ほど経った夕食後、妻がスマートフォンを持ってきました。「これ、見て」と画面を差し出されたのです。表示されていたのは出版社からのメールでした。
「来月、本になるって」とだけ妻が言いました。僕はようやく「……すごいな」と返したきり、それ以上、何も言葉が出てきませんでした。
そして...
あの夜、妻が寝た後、僕はリビングで1人になりました。妻の数年間を、僕はずっと「誰も読まない時間」だと笑ってきました。けれど読んでくれていた人は確かにいて、その読者の中に、僕はずっと入っていなかったのです。
自分の浅さが情けなくて、しばらく天井を見上げていました。妻は僕に見返してほしかったわけではないはずです。ただ、自分の時間を、自分の言葉で積み重ねていただけでした。それを笑っていたのは、ずっと家にいる妻が遠くへ行く気がして怖かった、僕の方だったのだと思います。
翌朝、いつもより早く起きて、僕はゆっくりと、妻のブログを最初の記事から読み直し始めました。
(40代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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