なぜかイライラしてしまうのは心のSOS? 感情と上手に付き合う心のレッスン

なぜかイライラしてしまうのは心のSOS? 感情と上手に付き合う心のレッスン

2025.12.20 11:10

上司や同僚、友人から言われた“ちょっとした一言”や、公共交通機関などでの、知らない誰かのちょっとした行動に、なんだかむしょうにイライラしてしまうこと……ありますよね。

いつもなら許せることなのにモヤモヤが残ってしまう時にも「疲れているのかな」「生理前かも」なんて、自分の体調のせいにしてしまったのも、一度や二度ではないはず。だけどそのイライラ、身体ではなく自分のココロからのSOSである場合もあるようです。

・怒る必要があること、怒る必要がないことの違い

・不機嫌な自分を許すためにするべき「感情の整理と選択」

・不機嫌な自分を無視すると……自分の首が閉まり続ける!?

■私たちがやりがちな「別に不機嫌じゃないし」という強がり

『不機嫌を飼いならそう 嫌な気持ちにメンタルをやられない』(主婦の友社・藤野智哉著)は、心の健康や自分との向き合い方をテーマにした本を多数出版している精神科医・公認心理師による、「不機嫌との付き合い方」を理解するための本です。

不機嫌、と一言にいっても、色々な気持ちがない混ぜになっていることも多いですね。例えば、大好きな恋人や友人との予定をドタキャンされた時。大好きな人に会えなかったことが寂しいのか、自分の予定を潰されたことに怒っているのか……悲しみが強いのか怒りが強いのか、分からなくなっていることも多いもの。

本は5章で編成されており、自分の「怒りの感情」「悲しみの感情」との向き合い方、そしてトラウマや周囲の「悲しみや怒り」との向き合い方、そして精神の専門家との付き合い方について学ぶことができます。

本の最初には感情のチェックリストがついていて、自分の感情について見直すことができます。ちなみに筆者は「怒り」チェックも「悲しみ」チェックも高得点を叩き出してしまいました。常日頃から自分で自分の機嫌を上手に取りながら過ごしているという自負がありましたが、どうやらそれはその場しのぎや限定的な処置だったよう。

不機嫌な自分が好きだ、という人はあまりいないでしょう。だからこそ、自分の気持ちを「見ないフリ」していただけで、ココロにはずっと、悲しみや怒りがあるのかもしれません。そんな感情とどう向き合っていけばいいのかが、この本のテーマでもあります。

■感情のコントロール=ブチギレないこと、ではない

本を読み進めていくと、怒りや悲しみという感情にも、その中に色々な種類があることが分かります。怒りや悲しみの種類について理解していくと、ある事象に対して、自分がなぜ怒り、悲しんでいるのかも分かるようになります。

本が目指しているのは、怒らず、悲しまない人間になろうということではありません。いつでもハッピーなマインドでいられれば、不機嫌にならずに済むでしょうが、無理に自分の感情をなかったことにすればするほど、怒りの感情や悲しみの感情は、心の奥底でどんどん増幅していくのです。

本当に悲しいこと、怒りたくなった自分の感情を消し去る必要はない。けれど「普段ならここまで嫌な気持ちにならないのに」湧いてくる怒りの中には、自身のものの考え方や癖が影響していることがあるようです。

例えば、満員電車の座席で足を組んでいる人がいる時。あまり気にならない時があれば、とても気になって「直接注意してやろうか」なんて思う時もありませんか?

このように時々獣のような怒りの感情が湧いてくるのは、仕方がないことなのだそう。だって、心に余裕がある時は許せるし、そうでない時は許せない、ただそれだけのことなのです。体調のせいにする必要はなく、自分には今、気持ちの余裕がないんだ、と自覚することが大切だそう。

長い間、怒りや悲しみの感情は「時間が解決してくれる」と思っていました。それも間違いではないのかもしれませんが、自分の感情を無視していると、時々周囲にいる人にまで、八つ当たりをしてしまうこともありますよね。

いつも不機嫌な人と思われないために大切なのは、自分の感情をコントロールすること。だけどこの「感情のコントロール」というものを、履き違えて考えている人も多いのではないかと思います。感情をコントロールするというのは、怒りや悲しみをいつでも人にぶちまけないこと……だけではなく、自分の感情を自分で理解し、伝えるべきことと伝えないことを取捨選択することのようです。

■いつでも機嫌よくいる必要はないけれど

藤野先生の意見の中ではっとしたのは「現代は機嫌良くいることがマナーのように語られる場面が多い」ということ。今の日本はコンプラ意識がかなり強くなってきていて、ちょっとしたことが誰かにとってのハラスメントにあたることに、ビクビクしている人も多いことでしょう。

部下や後輩の前で不機嫌でいれば「フキハラ」、恋人の前で不機嫌でいるのは「モラハラ」、感情をぶつければ「メンヘラ」……このように、周囲から一方的に不機嫌な感情に名前をつけられ、勝手に断罪されてしまうことが多いのが現代。

だけど本書では何度も「人間なんだから、急に不機嫌になることがあるのは当たり前」と語られます。不機嫌との共存は誰にとっても不変であるのに、現代のコンプラ意識に合わせて自分の感情を押し殺していると、周囲にも“感情を押し殺して不機嫌を隠すこと”を求めるようになってしまいます。

だからこそ、感情を整理して「よく考えたら怒るほどでもなかったこと、本当に嫌だから伝えた方がいいこと」を選ぶ能力は、本来現代を生きる人全てに必要な能力といえるかもしれません。日本には言わずに察した方がよいとする文化が根付いていますが、今やその考えはコンプラ社会とはマッチしていないといえるのかもしれません。

精神科や心療内科が敬遠されがちなのも、そんな日本ならではの悪習ともいえます。ですが、自分の中でずっと解決できなかった問題が、診療によって改善することもあります。イメージに関わらず、自分に必要なことかどうかを考えてみるのも、感情の取捨選択のひとつといえるのではないでしょうか。

(ミクニシオリ)

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