経済損失15兆円! 5人に1人が不眠? 日本の深刻な「眠れない」問題を変える睡眠障害内科とは
【医師が解説】日本は5人に1人が不眠に悩む、OECD加盟国の中で最も睡眠時間が短い「不眠大国」です。睡眠の悩みに専門的な診療を行う「睡眠障害内科」とは? 不眠の現状、誤解、専門医療の役割、受診の目安についても整理し、質の高い睡眠への道筋を分かりやすく解説します。
毎晩布団に入っても眠れず天井を見つめている方、朝起きても疲れが取れず困っている方はいませんか? 現代の日本では5人に1人が睡眠の悩みを抱えており、深刻な事態を受けて「睡眠障害内科」という診療科の設立が検討されています。
現在はまだ認可されていませんが、睡眠医療の重要性が認識され、専門的な診療体制が整いつつある段階です。これまで「眠れないのは気持ちの問題」「年を取れば眠れなくなるのは当然」といった誤解に苦しんでいた多くの方にとって朗報と言えるでしょう。
年齢を問わず多くの睡眠障害を診てきた専門医として、正しい知識と質のよい眠りへの道筋をご紹介します。
日本は世界有数の不眠大国! データが示す深刻な現状
日本人の睡眠時間は、世界最短レベルです。OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、日本の平均睡眠時間は7時間22分と最も短く、理想とされる7~8時間を確保できている人も全体の約3分の1にとどまります。
さらに深刻なのは、成人の約21.7%が慢性的な不眠症状を抱えていることです。日本の人口に換算すると、約2600万人に相当します。まさに「不眠大国」と呼ばれる状況と言えます。特に働き盛りの40~50代では3人に1人が睡眠の問題を抱えており、社会全体への影響も大きい状況です。
睡眠不足で問題になるのは、単なる疲労だけではありません。免疫力の低下、生活習慣病リスクの増加、うつ病など精神疾患の発症率上昇、交通事故や労働災害の原因にもなります。経済損失は年間約15兆円に上るという試算もあり、個人の健康問題を超えた社会問題となっているのです。
睡眠障害内科とは? 眠れない悩みの解決に、専門診療が必要な理由
「睡眠障害内科」は、睡眠の問題を専門的に診断・治療する医療分野として検討されています。まだ正式な診療科としては認可されておらず、正式名称や制度開始時期は今後変更される可能性もありますが、独立した診療科としての設立が議論されています。高い専門性が求められ、社会的ニーズも大きいためです。
睡眠障害内科は、従来の内科や精神科では十分に対応できなかった複雑な睡眠問題に、専門的なアプローチで取り組むことが期待されています。主な対象疾患としては、以下が考えられます。
・不眠症:入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒など
・睡眠時無呼吸症候群:いびきや呼吸停止
・ナルコレプシー:いびきや呼吸停止による睡眠の質の低下・日中の強い眠気や睡眠発作
・レストレスレッグス症候群:脚のむずむず感による入眠困難
・概日リズム障害:体内時計の乱れによる睡眠パターンの異常
睡眠障害内科では、詳細な問診に加え、睡眠ポリグラフ検査(PSG)や携帯型睡眠検査装置などの専門的な検査機器を使い、客観的データに基づいて診断と治療を行います。これにより、従来見過ごされがちだった睡眠の問題も改善の糸口が見出せるようになることが予測されます。
睡眠に関する「思い込み」が改善を妨げる? よくある誤解と真実
長年、睡眠には多くの誤解がありました。これが治療を妨げ、症状を悪化させる原因となっています。いくつかの例を挙げてみましょう。
誤りです。実際には、加齢により睡眠パターンは変化しますが、質のよい睡眠は何歳になっても重要な点は変わりません。高齢者の不眠の多くは、治療可能です。
誤りです。アルコールは一時的に眠気を誘いますが、睡眠の質を悪化させ、中途覚醒の原因になるため推奨されていません。
誤りです。現在の薬は安全性が向上しており、適切な使用であれば依存リスクは低くなっています。
誤りです。実際には、15~20分の短い昼寝は、午後のパフォーマンス向上に有効と考えられています。ただし、夕方以降の仮眠は夜の入眠に影響するため、避けたほうがよいでしょう。
専門医だからできる網羅的な睡眠治療……薬・CBT-I・生活指導・機器治療
睡眠の専門医療では、一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせた個別治療を提供します。包括的な治療アプローチとして、まずは薬物療法で、最新の睡眠薬や漢方薬を必要に応じて適切に処方します。
次に、薬に頼らない治療として注目されているのが認知行動療法(CBT-I)です。睡眠に対する考え方や行動パターンを見直し、根本的な改善を目指す方法で、不眠症に対して薬物療法と同等以上の効果があると科学的に証明されています。長期的改善が期待できる点も魅力です。
さらに、日々の生活習慣を丁寧に見直して、具体的なアドバイスを提供する睡眠衛生指導も行います。睡眠時無呼吸症候群などがある場合は、CPAP療法などの医療機器による治療も行います。
睡眠は美容と健康の鍵! 究極のアンチエイジング効果があると言える理由
近年の研究により、6時間以上の良質な睡眠は「究極のアンチエイジング」であることも明らかになってきました。睡眠中には成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や再生が活発に行われます。また、脳内の老廃物も排出され、記憶の整理や定着も進むのです。
十分な睡眠は、肌の健康維持、免疫力の向上、認知機能の保持、そして心の健康にも直結しています。高価な美容液やサプリメントよりも、まず質のよい睡眠を確保することが効果的で経済的なアンチエイジング法なのです。
これが目安! 睡眠障害で受診を検討すべき具体的な症状・タイミング
以下の症状が2週間以上続く場合は、専門医に相談しましょう。
・入眠に30分以上かかる日が週3回以上ある
・夜中に2回以上目が覚める
・早朝に目が覚め、その後眠れない
・十分眠ったはずなのに、日中に強い眠気がある
・いびきや呼吸停止を家族に指摘される
・脚のむずむず感で眠れないことがある
・睡眠不足で日常生活に支障が出ている
早期相談と治療により、全身状態の悪化や生活への支障を防げます。睡眠は健康の基盤です。「眠れないだけ」と軽視しないことが重要です。
まとめ:質のよい睡眠が毎日の充実度と健康を決める
睡眠障害内科の発展により、これまで「仕方がない」と諦めていた睡眠の問題に、新しい解決の道が開かれています。正しい知識と適切な治療で、多くの人が質のよい睡眠を取り戻しています。1人で悩まず、まず専門医に相談しましょう。睡眠の問題には必ず原因と解決法があります。
睡眠は人生の3分の1を占める大切な時間であり、睡眠を整えることは人生の質そのものを向上させる第一歩です。睡眠時間を大切にすることで、残りの3分の2の時間がより豊かで健康的なものになります。新しい睡眠医療を活用して、健やかな眠りとさらに充実した生活を手に入れられることを、心より願っております。
■参考
・健康づくりのための睡眠指針(厚生労働省)
・睡眠医療プラットフォーム(田辺三菱製薬)
0歳から100歳まで1世紀を診るプライマリケア医。小児科・内科の2つの専門医として、感染症、アレルギー、生活習慣病まで、幅広い診療と執筆活動を行っている。
執筆者:武井 智昭(医師)
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