堤真一、山田裕貴(C)2025「木の上の軍隊」製作委員会

堤真一&山田裕貴、日本兵役でW主演「木の上の軍隊」終戦80年目に映画化

2024.12.11 08:00

作家・井上ひさしが生前やりたい事として記していた原案原案を基に、こまつ座にて上演され人気を博した舞台「木の上の軍隊」が、終戦80年となる2025年6月13日に沖縄先行、7月に全国公開されることが決定。俳優の堤真一山田裕貴がW主演を務めることがわかった。

  

舞台「木の上の軍隊」映画化

「木の上の軍隊」ティザービジュアル(C)2025「木の上の軍隊」製作委員会
本作は、太平洋戦争末期、日本で熾烈な地上戦が繰り広げられた沖縄で、終戦を知らずに2年間、ガジュマルの木の上で生き抜いた日本兵2人の実話を基にした物語。井上氏が遺した1枚のメモを基に、こまつ座&ホリプロ公演として2013年、藤原竜也、山西惇、片平なぎさを迎え初演された。その後、「父と暮せば」「母と暮せば」と並ぶこまつ座「戦後“命”の三部作」位置づけられ、16年、19年にはこまつ座公演として山西惇、松下洸平、普天間かおりが出演し、再演、再々演され、19年には沖縄でも上演。世界からも注目され様々な国から上演依頼がある。映画では、全編を沖縄で撮影、沖縄出身の平一紘氏が監督を務める。沖縄在住のスタッフを中心に組まれた制作陣と共に、全編沖縄にて撮影、木の上のシーンは実話と同じく伊江島で、実際に生えているガジュマルの木を活用し撮影を敢行した。

1945年太平洋戦争末期―沖縄・伊江島で日本軍は米軍との激しい交戦の末に壊滅的な打撃を受けていた。宮崎から派兵された上官・山下一雄(堤)、地元沖縄出身の新兵・安慶名セイジュン(山田)は敵の激しい銃撃に追い詰められ森の中に逃げ込み、大きなガジュマルの木の上へ登り身を潜める。太い枝に葉が生い茂るガジュマルの木はうってつけの隠れ場所となったが、木の下には仲間の死体が増え続け、敵軍陣地は日に日に拡大し近づいてくる。連絡手段もなく、援軍が現れるまで耐え凌ごうと彼らは終戦を知らぬまま2年もの間、木の上で“孤独な戦争”を続けていた。やがて極限状態に陥った2人はどうなるのか。

堤真一&山田裕貴、日本兵役で初共演

平一紘監督(C)2025「木の上の軍隊」製作委員会
本作で主演を務めるのは、映画、ドラマ、舞台と多岐に渡る活躍を見せ、俳優として名実共に確固たる地位を築き上げてきた堤。戦争下の厳しく恐ろしい上官・山下が木の上の生活で変わっていく様を、悲惨さの中にユーモアを交えて演じきる。堤と並んで主演に抜擢されたのは、ジャンルを問わず幅広い役柄に挑み続ける山田。沖縄で育ち、一度も島から出たことがない純朴な新兵・安慶名を嘘のない眼差しで、真っ直ぐに表現。山田が演じる安慶名を通して体感する沖縄戦は、まさに語り伝えていかねばならない事実に見える。

初共演となる堤と山田だが「難しい役だと色々考えていたけれど、真っ直ぐな安慶名そのものの山田くんのおかげで2人だからこそ生まれたものをそのままやっていけばいいんだと思えた」(堤)、「堤さんの実在する力が凄く、お芝居せずに反応できる、役を生きるということができた」(山田)と互いに信頼も厚く、育った環境も地位も年齢も違う山下と安慶名の対峙を見事に体現。木の上で死への恐怖と日本兵としての使命感に葛藤しながら生き抜いていく様をリアリティをもって魅せていく。

平監督は、本作の映画化にあたり「僕は、沖縄で生まれ育ち沖縄戦について沢山知っているつもりでした。しかし、この映画を撮る為にあらゆる角度で取材し、あの戦争を見つめた時『木の上の軍隊』で皆さまに見せたい景色が見えてきました。沖縄で撮ったということ。伊江島で撮ったということ。生きた樹で撮影したこと。それらは全てスクリーン上で皆さまに肉迫するでしょう。本当に起きた事の恐ろしさと、素晴らしさをご覧頂きたいです」と想いを語った。(modelpress編集部)

堤真一(山下一雄役)コメント

この作品は、ただ戦争はいけないということだけでなく、戦争によって変わっていく人間の価値観や、今の時代にも通じるその時代ごとの世代間のギャップなど、色々なことが描かれています。監督が沖縄出身ということもあり、沖縄からの目線で描かれていますが、僕自身もこれまで知らなかったことが多く、この映画を通して実際にこういうことがあったということを知り、学んでいます。今からもう、若い方たちにはもちろん、自分の子どもたちにも見せたいなと思っています。沖縄が戦争で大きな被害を受けたことは知っていましたが、長い年月が経った今だからこそ、細かいことまでつまびらかにしていかなくてはならない、とあらためて感じました。まだ映画は完成していませんが、題材そのものも含めて、日本だけでなく、まだ争いがおこっている世界中でも観ていただきたいです。

山田裕貴(安慶名セイジュン役)コメント

この作品のお話をいただき、脚本を読んだ時、監督が実際にたくさん取材をされ、戦争の悲惨さ凄惨さもしっかり映し出されていたので、僕も含めて戦争を知らない世代の人が増えてきている中、こういう作品を伝える役目をもらえて嬉しかったです。僕は、戦争真っ只中を生きているわけではないけれど、疑似体験として役を生き、体感していくお芝居の中で、2年間木の上で生き抜いた人がいる、それが出来た人がいるから僕たちにも何かできると、そう感じられるのは、実在した人を生きるということの強みなのかなと思っています。作品を通して僕も知らなかった沖縄の歴史を知ることができ、こういう時代があったから、今があるのだとあらためて感じることができました。この事実を知ってもらい、この作品がひとつ考えるきっかけになればいいなと思っています。それは日本にとどまらず、世界中の人にも、1人でも多くの方に観てもらえたら幸せです。

監督・脚本:平一紘氏コメント

この度「木の上の軍隊」の監督・脚本を務めることになりました。僕は、沖縄で生まれ育ち沖縄戦について沢山知っているつもりでした。しかし、この映画を撮る為にあらゆる角度で取材し、あの戦争を見つめた時「木の上の軍隊」で皆さまに見せたい景色が見えてきました。たった2人の兵隊の、可笑しくも壮絶な2年間の戦いを是非劇場で体験して頂きたいと思っています。堤真一さん、山田裕貴さんは見事なまでに、兵士たちの決意と揺らぎ、葛藤を演じてくれました。僕らはただ、それを見守るように撮影しました。それだけで十分でした。そして終戦80年の節目に公開するということ。沖縄で撮ったということ。伊江島で撮ったということ。生きた樹で撮影したこと。それらは全てスクリーン上で皆さまに肉迫するでしょう。本当に起きた事の恐ろしさと、素晴らしさをご覧頂きたいです。

企画・プロデューサー:横澤匡広氏(エコーズ)コメント

私自身、沖縄映画に80作以上関わる中で、未だ沖縄から沖縄戦を描いた映画が無かった事に気づきました。沖縄から沖縄戦を描こうとした時に最初に浮かんだ作品が劇団こまつ座の舞台「木の上の軍隊」でした。ガジュマルの木の上で2年間戦い続けたこの物語は、沖縄が抱えている問題を解決出来る希望の物語だと感じています。2人が必死に生き抜いた物語から見えてきたものは「生きる」という事の素晴らしさです。沖縄では戦後80年経った現在でも、沖縄戦から続く幾つもの問題が根強く残っています。木に登った2人が見た“戦争”とは何か、“生きる”とはどういう事なのか。それを模索し続けることで、その先にある「希望」へと繋がるよう、この映画を世界中に届けたいと思っております。

プロデューサー:小西啓介氏(ハピネットファントム・スタジオ)コメント

2023年の終戦日の翌日に沖縄在住の監督、スタッフをメインに据え、全編沖縄ロケで沖縄戦を描いた映画を企画しているので相談に乗って欲しいというメールを横澤プロデューサーから頂きました。提案されたのが舞台「木の上の軍隊」の映画化でした。2025年には終戦80年を迎え、一般住民を巻き込んだ悲惨な地上戦が繰り広げられた沖縄でさえ戦争を体験した人が少なくなり、それを伝える人も少なくなっていると聞きます。まだ30半ばの若い世代の平監督が本作を通じてあの時何が起きていたのかを伝えることはとても意義深いことであると思いました。今、撮影を終え、この企画に賛同してくださり体一つで現場に乗り込んで頂いた堤さんや山田さん、それに応えるべく奮闘した監督、スタッフの素晴らしい仕事ぶりに感銘を受け、そして伊江島、沖縄の地で制作することの重要性を改めて感じました。是非、映画館で体験して頂きたい作品です。

プロデューサー:井上麻矢氏(こまつ座)コメント

「木の上の軍隊」は故井上ひさしが書く事を切望していた物語です。その思いが叶わず、作家は他界しましたが、様々な方の手によってその思いは引き継がれ2013年の初演を皮切りに、三度再演を重ねてきた演劇の作品でした。日本では再々演を重ね、世界から上演許可の依頼をいただき、昨年は韓国のLGアートセンターにて公演も行いました。そんな作品を映画化したいとおっしゃって下さったのは沖縄の血脈の入った沖縄の皆さんでした。そして素晴らしいキャストの皆さんに恵まれました。映画が大好きだった井上ひさしはどれほど嬉しかったでしょうか。この作品の根底に流れているのは「平和」です。枝や幹が複雑に絡み合う生命の木であるガジュマルの上で生き抜こうとした2人の兵士の姿を通して、生きることを真摯に描くこと、それがこの混沌とした時代に届ける今を生きている私たち1人1人の使命だと思います。沖縄にはいずこにも御嶽(祈りの場)があります。そして風の吹き抜ける島でもあります。描かれた沖縄戦を通して、私たちの戦後もそして誰もが持っている素晴らしい未来までも感じられる映画となるように私もまた祈りを込めてこの作品を皆様に届けたいと思います。
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