アスリート×会社員のデュアルキャリアを実践! 株式会社CHINTAI・小林諭果さんの「スキーキャリ」
取材・文:ミクニシオリ
撮影:大嶋千尋
編集:中納俊/マイナビウーマン編集部
多様な働き方が広がりつつある現代。リモートワークを取り入れて、生活と仕事のバランスを取っている人もいれば、本業と副業を組み合わせて、自分だけのキャリアを模索する人も。
中でも昨今、注目が集まっているのが、スポーツと仕事を組み合わせる「デュアルキャリア」です。
デュアルキャリアとは、アスリートが競技者としてだけでなく、人としてのキャリアや職業を現役時代から並行して築く考え方です。現役時代から企業に所属することには、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
今回お話を聞いたのは、ウィンタースポーツの世界でまさに「命を張って」戦ってきたアスリート。なぜデュアルキャリアを追求してきたのか、そして引退後の人生に、どんな展望を描くのか……他とは違う「自分だけのキャリア」の描き方を探ります。
■セカンドキャリアを不安視せずスポーツに専念できる「デュアルキャリア」
ーーまずは、小林さんの経歴を教えてください。
うちは兄弟全員でスキージャンプに挑戦してきた“ジャンプ一家”で、私自身も小学生の頃にスキージャンプを始めました。高いところが怖くて、最初は全然やりたくなかったんですが、一度表彰台に上がると、その興奮をもう一度味わいたくなり、結局31歳までジャンプを続けました。しかし就職活動当時は、プロとしてアスリートを続けていくかどうか真剣に悩みました。たまたま、アスリートのデュアルキャリアを支援してくれるCHINTAIに出会い、会社員とアスリートの両立を目指してきました。
ーーいくつもの国内大会で優勝を重ねてきた小林さんでも、スポーツを続けるか悩んでいたんですね。
大学時代もスポーツ科学部に所属し、寮生活で競技に打ち込んできましたが、同級生には誰もが知るような素晴らしい実力を持つ選手もいて、私自身は「自分は大した成績ではない」と感じていました。大学卒業時に、競技を続けるビジョンが見えていなかったんです。就職活動をする前は、競技を辞めたらどうするかなども何も考えておらず「実家に帰ろうかな」と思うほど、何がやりたいか分からない状態でした。CHINTAIへの就職で、安心してスポーツを続けられる道が明確に立ったことで、視界がとても明るくなりました。
ーー小林さんはCHINTAIのデュアルキャリア採用の選手として入社しているんですよね。
CHINTAIには「CHINTAIスキークラブ」というクラブチームがあって、私はそこに所属しながら、オフシーズンには本社で会社員としての経験を積ませていただいてきました。実業団やスポンサー契約のアスリートは、競技に専念される方も多いのですが、私は入社当時から一般の社員と同じように会社のデスクに座って業務を行う機会をいただいてきました。
ーー会社員とプロスポーツの両立……考えただけで大変そうですが、実際はどんなメリットがあるのでしょうか。
私自身が就職活動時に感じていたように、引退後のキャリアを不安に感じているアスリートは多いです。私も、デュアルキャリアに出会わなければ早いタイミングで競技を引退していたかもしれません。採用段階から、競技引退後もそのまま会社に残って一人のビジネスパーソンとしてキャリアを築いていける環境を約束してもらえるので、人生の選択肢が広がるという意味で非常にありがたいです。
■9年間の会社員とアスリート生活の両立と、決意の引退
ーー小林さんは実際、どんな生活を送って来られたんですか? アスリート生活と会社員の両立って、想像がつかないです……!
基本的には、午前9時半に出社し、午後3時に退社してトレーニングに向かうという非常に恵まれた環境で仕事と練習を両立していました。ただ、シーズン中や遠征など、大会がある時には1週間以上の不在は当たり前で、長いときには3ヶ月近く、家に帰らず遠征先などに滞在する生活を送っていました。目標としていたオリンピックイヤーには、会社から「1年間競技に専念していい」という期間も与えてもらえましたし、基本的にはスポーツへの専念を中心に、ただ、社会人としての自覚も忘れない程度に仕事をいただいてきました。
ーーでは会社員としてどのくらいの時間を過ごすかは、競技の状況によって変わるんですね。
はい。やっぱり長い間会社を不在にした後には、色々なことを忘れてしまっていたり、前にも教えていただいたことをまた教えてもらうことになったりと、周囲のメンバーにはとてもサポートしてもらいました。ただ、2026年に引退しようというのは、4年前にはもう決めていたので、これからはお世話になってきた会社に仕事で恩返しをしていけることも、すごく楽しみです。
ーー引退のタイミングなど、会社員の転職以上に悩むことも多そうです。小林さんはどのように、キャリアを決定してきたのでしょうか。
私の場合、2026年は自分にとって最後のオリンピックイヤーだと感じていました。4年前に自分の中でこれまでで一番のピークを経験し、オリンピックを目指すなら2022年だと思っていました。しかし、コロナの影響で選手選考自体がなくなってしまい、その悔しさもあって2026年を最後の挑戦と決め、競技を続けてきました。部署の皆さんが札幌まで大会の応援に来てくださったことも、とても嬉しかったです。
ーーなるほど……スポーツの世界って、本当に厳しいですよね。
実際30代まで競技を頑張ってきましたが、年齢を重ねると体力的にツラいと感じることも増えたり、いい成績が出せななかったり……そんなときはこれだけ会社に応援していただいてるのに……と申し訳ない気持ちでいっぱいになることもありました。大変なことはたくさんありましたが、今はやっぱり、スッキリした気持ちが大きいです。
■これからは会社員として……自社と選手を支援する小林諭果さんらしいキャリア
ーー現在は広報室に異動されたばかりとのことですが、フルタイムでお仕事されてみてどうですか?
新しい部署では自分にとっても初めての経験をたくさんさせていただいていて、毎日が刺激的です。競技も楽しかったけど、それと同じくらい、会社員としてのキャリアを楽しめていると思います。仕事中もそうですが、業務終了後の時間が使えるようになったことも、自分の中で大きな変化でしたね。
ーーこれまではトレーニングの時間に使っていたんですよね。今はどんな風に過ごしているんですか?
CHINTAIは部活動が盛んなので、最近ではSASUKE部の活動に参加し、その一環でボルダリングにも挑戦しています。最近では他競技のアスリートの方と交流する機会に恵まれるなど、これまで誰かと深く話したり、お酒を酌み交わしたりする機会が本当になかったので、毎日が新しい経験の連続です。
ーーアスリートとしてのキャリアは、今の仕事に生きていますか?
せっかく広報として働く機会をいただいたので、自分が得意なスポーツ関係での新たな露出の機会を増やせるよう尽力していきたいと思っています。あとは継続する力があることと、体力には自信があるので、これからもっと仕事に活かしていけたらいいなと思っています。先日は、社長を呼び止める必要があって、全力で走りました(笑)!
ーー今後、どんなキャリアを実践していきたいと考えていますか?
アスリートとしてのキャリアは一幕を終えましたが、会社員としてのキャリアは、周囲の皆さんと比べてまだまだ遅れを取っていると思うので、まずは目の前の仕事をしっかりこなしていきたいです。その中でいつか、会社員としての仕事が、お世話になってきたスキースポーツや、スポーツ業界全体ともっと深い繋がりを持てるようになっていくといいなと考えています。選手としては引退しても、まだスポーツと関われる可能性があることが本当にありがたいです。CHINTAIスキークラブで活躍する現役選手の可能性を少しでも広げられるよう、頑張っていきたいです!
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