ニットデザイナー・山本洋子さん 手編みを「手芸」で終わらせない

ニットデザイナーの山本洋子さんは、ニットブランド「タスニット」を主宰し、作品デザインから制作、編み図作成、教室やワークショップ講師まで幅広く手掛ける。ロックやモードの感性を取り入れた独創的な作品で、従来の手芸の枠を超えた表現を追求してきた。手編みの技術や作り手が正当に評価される環境作りを目指し、「個人にも可能性があることを示したい」と活動を続けている。
(津田茂樹)
68年、京都市生まれ。母や姉の影響で幼い頃からファッションに親しんだ。旅行会社勤務を経て、日本手芸普及協会で学び始める。手編みを習い始めた頃から「趣味ではなく仕事にしたい」と考え、憧れの手編みデザイナー小野鈴子さんを電話帳で探し出して訪問した。「仕事にならないわよ」と言われても志は揺らがなかった。
ロックの世界を表現
12年に日本手芸普及協会師範となり、14年にタスニットを設立。ブランド名は3人の息子の頭文字に由来し、「足す」の意味も重ねた。ロゴには十字架と編み針を組み合わせ、好むロック音楽の世界を表現する。
作品は黒やグレーを基調としたモノトーンが中心。糸端をあえて残したり、ゆがみやほつれを見せたりするなど既成概念にとらわれないデザインが特徴だ。必ずしも高級糸を使う必要はないと考え、金属糸や工業用糸、リサイクルコットン糸などを活用する。編み物をする人から「どの本にも載っていない編み方」と評されることもある。
ブランドの出発点は南アフリカ産キッドシルクモヘヤを使ったドレス。トップを手編み、ボトムを家庭用編み機で仕上げた作品で、14年の日本手芸普及協会モヘヤコンテスト銀賞を受賞した。現在までにバッグやアクセサリーを含め約60点を発表している。
日本のニット業界の課題も感じている。海外では職人や作り手が高く評価される一方、日本では手編みは趣味や内職の延長と見られがちだという。低賃金による人材不足や制作時間の不足も深刻で、「若い世代が定着しにくい」と指摘する。
「あみものカフェ」開く
そうした状況を変えようと、21年から大阪市内のシェアキッチン「イルアエル」で月1回の「あみものカフェ」を開いている。プロ志望者だけでなく、作品作りを楽しみたい人も参加する。「参加者の作品を多くの人に見てもらいたい」と話す。
作品発表の場作りにも力を入れる。19年に個展を開き、今年5月には「ツクルヒトタチ博in大阪市中央公会堂2026」に出展。ニット作家の出展は珍しく、個性的な作品を求める来場者の注目を集めた。
「手編みは一つとして同じものがない。1本の糸から生地を作り、色や形を自由に生み出せるのが魅力。手芸とアパレルの接点をもっと強くし、個人にも可能性があることを示したい」と、手編みを創作表現として社会に広げる挑戦を続けている。

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