TMNETWORK

TMNETWORKという“量子もつれ”「結成当初の関係性がそのまま」

2026.09.03 19:12
提供:Music Voice

 TMNETWORKが9月23日にリリースするCD『QUANTUM』。ライブBD『TMNETWORK TOUR 2026 QUANTUM LIVE Blu-ray』との同時発売を記念して、9月1日夜にShibuya LOVEZでイベント「TMNETWORK QUANTUM キク・ミル・ヨム観測日」が開催された。以下は音楽コンシェルジュのふくりゅう氏によるレポートとなる。

 TMNETWORKが9月23日にリリースするCD『QUANTUM』。ライブBD『TMNETWORK TOUR 2026 QUANTUM LIVE Blu-ray』との同時発売を記念して、9月1日夜にShibuya LOVEZでイベント「TMNETWORK QUANTUM キク・ミル・ヨム観測日」が開催された。以下は音楽コンシェルジュのふくりゅう氏によるレポートとなる。

 

ライブでは語らない3人が、公開収録で言葉を交わす

 TMNETWORKが2026年9月1日、東京・Shibuya LOVEZでトークイベント『TMNETWORK QUANTUM キク・ミル・ヨム観測日』を開催した。小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登の3人が登壇し、InterFMの特番と、WOWOWのアフタートークの公開収録として実施。9月23日に発売されるスタジオ・アルバム『QUANTUM』を、音と言葉の両面から先行して“観測”する一夜となった。

 このイベントは、InterFM、WOWOW、リットーミュージックの3社がメディアの枠を超えて展開する『TMNETWORK スケルラジオ』を軸にしたものだ。InterFMでラジオを“キク”、WOWOWでアフタートークを含む映像を“ミル”、リットーミュージックが書籍・電子書籍へ展開して、さらに深く“ヨム”。異なる媒体に分かれた3人の言葉を重ね合わせる設計そのものが、この日の“観測”というテーマと響き合っていた。

 『QUANTUM』とは“量子”を意味する。イベントタイトルの“観測日”とは、作品の核となる現象“量子もつれ”に由来する。ペアになった粒子の一方と他方をそれぞれ観測し、結果を突き合わせることで、初めて両者の関係が見えてくる。そんな仕組みを、音を“キク”、映像を“ミル”、言葉を“ヨム”というこの日の体験に重ねた、TMNETWORKならではのキーワードだ。

 TMNETWORKのライブにはMCもアンコールもない。その分、公開収録としてのトークイベントは貴重だ。コンサートでは封じられている、3人の雑談トークや冗談の掛け合い。客席の笑い声とともに次々とこぼれ出した。

 

ライブが先、音源が後。『QUANTUM』の反転した時間軸

 『QUANTUM』の特異さは、通常の“アルバム発売からツアーへ”という順番を反転させた点にある。収録曲の多くは、1月から5月にかけて全国13都市20公演を巡った『TMNETWORK TOUR 2026 QUANTUM』で、完成音源より先にFANKS(※TMNETWORKファンの意味)へ届けられた。

 そのステージは、再構築された代表曲に、演奏と同期する映像と照明を重ね、新組曲「QUANTUM」などを通じて時間軸を組み替えるかのように進行した。アルバムより先にライブで楽曲を体験したFANKSは、完成前の音をすでに“観測”していたことになる。

 かつては「アルバムを“ひっさげて”全国をツアーで回るのが当たり前だった」と、木根は振り返る。今回は“量子もつれ”というテーマに合わせ、先にライブで新曲を発表し、その後にアルバムを完成させる真逆の手順を選んだ。一方、宇都宮は「基本的にツアーが終わると、忘れるようにしているんですよ。次のために」と告白。長年のルーティン。いったん手放した記憶を、レコーディングのために呼び戻すことが大変だったという。

 

0と1は恋愛に似ている。量子の世界を身近にする、小室の比喩

 話は、ツアー中の映像に現れた“0”と“1”へも及んだ。コンピューターの二進法は0、1、10、11、100と進む。これをどう身近に伝えるか考えた小室は、「恋愛が一番ハマるかな」と切り出した。くっつかない状態を“0”、くっつく状態を“1”とし、付き合い、一緒に旅行し、同居する。関係が進むたび、数字も次の段階へ。結婚や子どもの誕生まで数えていけば、「あっという間に100万とか、1億とか」と会場を沸かせた。

 奔放な例えの底には、“0”にも“1”にもなり得る可能性を、一目惚れや両想いの瞬間へ引き寄せる発想があった。難解な量子の重ね合わせを、人と人との距離が変化し、未来が枝分かれしていく時間として捉え直す。ツアーで見た“0”と“1”は、単なるデジタル記号ではなく、まだ一つに決まり切っていない関係の象徴でもあった。

 今回のアルバムは、ライブアルバムではない。ライブの熱をそのまま録音するのではないのだ。一度リセットした3人が、ステージで育った曲をスタジオで新たに完成形へ組み直す。過去のライブ体験がアルバムの聴こえ方を変え、アルバムで見つけた音が過去のライブの意味を変える。その時間の往復こそ、『QUANTUM』という作品のギミックだ。

 

宇都宮の声を得た「Superposition」、木根が歌う「恋せよ乙女 -Run Through The Night-」

 イベント前半のInterFM収録ではアルバム収録曲である「Quantum」、「Entanglement」、「Rise Together」、「Superposition」、「恋せよ乙女 -Run Through The Night-」、「fate」の6曲を、解説トークを挟みながら試聴した。

 歌詞や歌い回しがアップデートされた「Rise Together」が解き放つ、“共に立ち上がる”というアッパーな魅力はもちろん、なかでも注目はライブと音源の差が鮮明な新曲「Superposition」だ。初披露した有明アリーナではエンディングでバックトラックのみが流れ、未来を予告するように姿を現したが、アルバムでは宇都宮のボーカルが加わった。インストゥルメンタルと歌、二つの状態を知ること自体が“重ね合わせ”になる。

 「恋せよ乙女 -Run Through The Night-」では木根がリードボーカルを担当する。自身がTMNETWORKで歌う楽曲は「歴史上3曲目」だと説明。宇都宮のハーモニーと弦楽器の響きが加わった音源に、小室は「ライブよりいいです」と評価。会場は大きな拍手に包まれた。ステージで聴き慣れた曲が、音源によって別の輪郭を獲得する瞬間だった。

 

AIでは均されない、42年の“もつれ”

 後半のWOWOW収録では、FANKSから寄せられた質問のうち6問に答えた。AIと音楽、3人にとってのラジオ、レコーディング、ツアー中の出来事、アルバムの曲順、3人の距離などへと話題が広がった。

 生成AIについて、小室はAI楽曲を「最初はびっくりする」と認めながらも、数曲聴くと同じ音域や楽器、声の傾向が現れ、「同じ曲を二度聴くことはあまりないかな、正直」と現状認識を率直に語った。対照的に『QUANTUM』全66分49秒を富士方面へのドライブで通して聴いた際は、「すごく気持ちよかった」という。テクノロジーを使うことと、人間の揺らぎを手放すことは同じではないのだ。

 曲順にもライブが深く関わっている。小室によれば、今回はまずツアーのセットリストがあり、スタジオ・アルバムも基本的にその流れを受け継いだ。最後はマスタリングで音量や曲間を整える。つまり『QUANTUM』はツアーの記憶を収めただけでなく、ライブの時間構造そのものを音源へ移したアルバムでもある。

 

近づいたのではなく、変わらない。3人を結ぶ距離

 「3人の距離は近づいたか」という問いからは、結成当初、狭い部屋で一緒に過ごし、練習後にファミリーレストランでコーヒーを飲みながら話した記憶まで飛び出した。木根は「その頃の関係性がそのまま」と振り返る。3人は個の存在でありながらも共鳴し続けてきた。そんな関係こそ、TMNETWORKという“量子もつれ”なのだろう。

 終盤、小室はアルバム『QUANTUM』が完成した感想について「本当に久しぶりに、ああすればよかった、こうすればよかったっていうのがあまりなくて」、「やり切った感がある」と語った。ライブで育ち、音源で再構築され、日々の感想によって意味を得た『QUANTUM』。リリース日である9月23日に作品を手にしたとき、聴き手はそれぞれの記憶とともに、新たな完成形を“観測”することになるのだ。

 なお、当日の模様は、WOWOWオンデマンドPPVで9月23日18時までアーカイブ配信され、視聴チケットは同日正午まで3,000円で販売される。そして、さらに9月27日18時からは『TMNETWORK スケルラジオ WOWOW ver. QUANTUM キク・ミル・ヨム観測日』として、WOWOWライブとWOWOWオンデマンドで放送・配信される。公開収録で生まれた言葉は、ラジオ、映像、書籍へと姿を変えながら、もう一度それぞれの場所で“観測”されていく。【テキスト:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】

 またTMNETWORKは2026年9月3日22時からNHK総合『SONGS』に出演する。代表曲の「Get Wild Continual」、「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」に加え、『QUANTUM』にも収録されている新曲「Superposition」もスタジオで初パフォーマンス。パフォーマンスのある音楽番組(歌番組)への出演は12年ぶり、『SONGS』へは初の出演となっている。

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