「続・続・最後から二番目の恋」

「老い」って、そんなに悪いこと?――小泉今日子×中井貴一『続・続・最後から二番目の恋』がくれた、等身大の希望

2025.05.29 18:10
「続・続・最後から二番目の恋」

「老い」なんて、できれば考えたくない。白髪も、しわも、物忘れも⋯。できるだけ遠ざけていたい――そんな気持ちは、きっと誰にでもあるだろう。しかし、「老い」ってそんなに悪いことだろうか?

アラカンになった主人公たちを描くドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(毎週月曜夜9:00-9:54、フジテレビ系/FOD・TVerにて配信)を観ていると、ふとそんな疑問が湧いてくる。ドラマの終盤を前に、いま一度本作を振り返り、還暦からのセカンドライフの「心のあり方」について考えてみたい。

「歳をとっても素敵」なんて、きれいごと?

この作品の美点は、大人たちが“ちゃんと歳をとっている”ことだ。しわができて、白髪が増えて、親が老い、同期の訃報が届く。若々しさがもてはやされがちな世の中で、ここまでリアルに「老い」を描く作品は少ない。しかも「老い」の中にある魅力を、誇張せずに見せてくれる作品は、もっと少ない。

もちろん、小泉今日子も中井貴一もアラカンとは思えない美しさ。それでも、「老いそのものを肯定してくれる」のは、やっぱりホッとする。どう考えても、自分もそちらに向かって歩いていくのだから。

「私のまま、歳をとっていい」と思える安心感

特に印象的なのは、登場人物たちが“年相応の役割”に押し込められていないところ。59歳の吉野千明も、63歳の長倉和平も、かつて私たちが見てきた“あの人”のまま年を重ねている。

私は、私でない何者かになんてなれないし、ならないままで年老いていく。このドラマからはそんなメッセージを受け取っている。

たとえば、私はかつて、出産の翌日にそのことを痛感した。「母親」になったはずなのに、驚くほど自分は“私のまま”。人生の一大事を経たのに、肩書きだけが増えて、心の中の何かが劇的に変わるわけではなかった。

それなのに、ドラマや映画に登場する年配者たちは、「優しいおばあちゃん」「貫禄ある重鎮」「意地の悪い老害」など、役割に収まりがちだ。でも本当は、誰しもが“その人のまま”で、年を重ねているはずなのに。

60代にして初めて出会う“兄貴分”

もうひとつ、どうしても触れておきたいシーンがある。

和平は63歳。多くの場面で最年長として、いじられたり、面倒を押しつけられる役を担ったりしている。そんな彼が本シリーズで、10歳年上の“先輩”に出会う。偶然同席した居酒屋で、頼もしくも愛嬌がのぞく成瀬千次と、たちまち意気投合するのだ。演じるのは三浦友和。野球好きという共通点から打ち解けると、和平はふと、こうこぼす。

「ピッチャーだったら、自分の人生も変わってたんじゃないかな――なんて思ったりして」

和平はキャッチャーだった。いつも誰かの投げるボールを受けるばかりだった。職場でも、家族とでも。そんな彼を、先輩の成瀬は夜の公園に連れていく。途中で知人の家に立ち寄り、ボールとグローブを借りて。そして言うのだ。

「とにかく、思いっきり! 俺が受け止めてやるから」

そのときの和平の表情。投げたボールの勢い。和平が少年時代からずっと抱えていた、自分の中にくすぶっていたモヤモヤが、この瞬間、スッと晴れていくのがわかった。

こんな夜が、本当に来るかもしれない

正直、私はそのシーンに感動した。「この歳になったら、コンプレックスなんて、もう自分の中で折り合いをつけるしかない」と思っていた。でも違った。60代になっても、こうして誰かに出会い、救われることはあるのだ。

もちろんこれはドラマだ。きれいな夢物語かもしれない。でも“無い話じゃないかも”と思わせてくれることが、どれだけ希望になることか。

『続・続・最後から二番目の恋』は、そんなふうに思わせてくれる、貴重なドラマだ。

小泉今日子、中井貴一だけでなく、坂口憲二、内田有紀、飯島直子⋯すべての役者が、実年齢と同じ年齢の「役」を演じる本作。

もしあなたが、これからの自分の毎日は、「老い」に向かって坂を下っていく一方だ――と思っているなら。「そんなことはないかもよ」と笑う先輩たちを探しに、このドラマを見てみてほしい。

■文/熊倉久枝

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