キム・ナムギルの重厚な演技から目が離せない実話をもとに描く本格サスペンス「悪の心を読む者たち」の見どころ

2024.03.13 07:00

「熱血司祭」(2019年)のキム・ナムギル主演で“韓国初のプロファイラー”ソン・ハヨンの葛藤と活躍を描く本格サスペンス「悪の心を読む者たち＜ノーカット字幕版＞」が、3 月22日(金)から「女性チャンネル♪LaLa TV」で放送される。実話をもとにしたショッキングな内容、そしてナムギルをはじめ演技巧者たちの緊張感あふれる演技が話題を呼び、韓国での放送時に大反響を巻き起こした衝撃作の魅力に迫る。

実話をベースに描く“狂気”と“痛み”

「悪の心を読む者たち」は、2022年1月から3月にかけて韓国SBSで放送されたクライムサスペンス。まだ“サイコパス”や“プロファイル”といった言葉が知られていなかった1990年代後半の韓国を舞台に、他者の気持ちに共感する力が人一倍強い刑事ハヨン(ナムギル)が韓国初の“プロファイラー”となって、“動機なき殺人”に向き合う姿を描く。

次なる殺人を全力で防ぎたい一心で凶悪犯の心理に肉薄するハヨン。だがその共感力ゆえに、凶悪犯の心理を理解しようとすればするほど心が悪に蝕まれ、自分を見失っていく…。

実はこの作品、実話がベースになっている。原作は、韓国初のプロファイラーとなって実際に犯人たちと危険な対話をしたクォン・イルヨン教授の体験をベースに描かれた同名小説だ。ドラマのストーリーも実際に韓国で起きた連続殺人事件をモチーフに構成され、犯人の狂気と被害者家族の痛みが生々しく表現されている。

それだけに、ナムギルも苦悩しながら撮影に臨んだという。ナムギル自身、放送後のコメントで「実在の被害者の家族にとってさらなる被害や傷にならないかが心配でした」「被害者とその家族のことだけを考えようと思いながら撮影していました」と、悩みの跡を打ち明けている。

犯罪心理に迫るヨハン「悪の心を読む者たち」あらすじ

ナムギル演じる主人公ハヨンは、東部警察署の刑事。誰よりも被害者とその家族の心に寄り添い、妥協を許さない姿勢で周囲から煙たがられていた。だが、捜査にプロファイリングを導入すべきだと孤軍奮闘するソウル地方警察庁の鑑識係長クク・ヨンス(チン・ソンギュ)だけは、彼を評価していた。

「いずれ韓国にも無慈悲な奴が現れます。奴らには動機はない」とプロファイリングの重要性を訴えるヨンス。そんな中、女性が殺害され全裸で放置される事件が発生する。被害者の恋人が逮捕され事件は終結したかに見えたが、数か月後に同様の事件が発生。怨恨でも強盗でもなく、罪を繰り返す理由は何なのか？ハヨンは犯罪者の心理を知るため、“赤い帽子”と呼ばれる収監中の連続婦女暴行犯に会いに行く――。

序盤から、薄暗い影を背負ったようなハヨンのキャラクターが強烈だ。売店の女性がハヨンを凶悪犯と勘違いするシーンがあるのだが、それも仕方ないほどハヨンという人物自身が不気味な存在感を漂わせている。

罪を犯す人間の心に強い関心を持ち、魅入られたかのように「どういう心理だ」と食らいついていくハヨン。“今、俺はお前だ――”。凶悪犯の心を覗き、自らの心と重ね合わせるギリギリの神経戦が展開する。前作「熱血司祭」でも演技大賞を受賞したナムギルが、約3年ぶりのドラマ出演で“サイコパス”の心理に深く迫っていくハヨンのヒリヒリとした攻防をリアルに演じている。

キム・ナムギル、前作に続き「演技大賞」受賞の快挙

事実をもとにしたセンセーショナルなストーリー、そしてナムギルの重厚な演技も視聴者の心をわしづかみにした同作。放送が年初めだったにもかかわらず、同年末に行われた「2022 SBS演技大賞」ではナムギルが前作「熱血司祭」以来3年ぶりの大賞を獲得。作品としてもSBS 2022上半期作品賞に選出され、パク・ボラム監督、ナムギル、モデルとなったクォン・イルヨン教授が特別賞を受賞。ほか数々の賞で高い評価を得た。

ナムギルと「医心伝心～脈あり！恋あり？～」(2017年)以来5年ぶり共演となったチン・ソンギュとのタッグも見どころの一つだ。演じたのは、ハヨンの良き理解者であり犯罪行動分析チームの創始者ヨンス。ドラマ「悪鬼」(2023年)では悪霊にとりつかれた民俗学研究者役で視聴者を震え上がらせ「2023 SBS演技大賞」ベストパフォーマンス賞を獲得した演技巧者ソンギュが、優しく冷静なヨンスを好演。緊張感あるストーリーに安らぎを与えている。

被害者の裸体が横たわる殺人現場など、目を伏せたくなるシーンも登場する同作。実際に起こった事件をもとにしていると聞けば、その凄惨さはいっそう胸に迫る。重い題材に真正面から真摯に取り組み、完成度の高いドラマに昇華させたスタッフ・キャスト陣の熱意と誠意が画面から伝わってくる傑作だ。