

interview 内野 聖陽
「ちょっと幸せ」をテーマに、グルメ・美容・健康・カルチャーなど、女性にうれしい情報満載のフリーマガジン「Poco'ce(ポコチェ)」から内野 聖陽さんのインタビューをお届けします♪
Profile
1968年生まれ。1993年に俳優デビュー。96年の森田芳光監督作「(ハル)」で第20回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。NHK連続テレビ小説「ふたりっ子」(96)で注目を集め、2007年の大河ドラマ「風林火山」では山本勘助を熱演。「臨場」(09/EX)「JIN- 仁 -」(09/TBS)「とんび」(13/TBS)など多数のテレビドラマに出演。19年放送のドラマ「きのう何食べた?」(TX)での演技も話題に。数多のドラマや映画、舞台作品で活躍中。
思わず“ムフッ”と笑みが溢れるような大人のおとぎ話
春画を愛する型破りな師弟コンビが繰り広げる、究極の偏愛異色コメディ映画『春画先生』。内野聖陽さんが演じるのは、江戸文化の裏の華とも言われた「春画」の奥深い魅力にとりつかれた変わり者の春画研究者、芳賀一郎こと春画先生。出演オファーを受けた時の心境を伺うと、「ふたつ返事でお受けしました」と話し始めてくれた。
「タイトルが『春画先生』ですよ、怪しいですよね。不穏な匂いがするというか、まずそのタイトルに興味を惹かれました。そして脚本を読んでみると興味深いだけでなく、かなり変わったラブストーリーだなと。これは絶対に面白い作品になるぞと思って快諾させていただきました」
有名な研究者でありながら、どこか社会性に欠け、好きなことに没頭するオタク的こじらせ中年男性である芳賀と、彼に出会ったことで春画の持つ魅力と芳賀自身に心奪われていく弓子。そこに芳賀が執筆する「春画大全」の完成に熱中する編集者や、芳賀の亡き妻の姉が現れてストーリーは大波乱を極めていく。
「僕は脚本から微笑ましい“おとぎ話”のような感覚を受けました。コメディなんですけど、笑わせようとするのではなく、思わずクスッ、ムフッと笑ってしまうような...。必死な人たちがそこにいて、真剣に生きてるつもりなんだけど、どこかズレていておかしい。そんな作品が僕は好きなので、今回の作品もとても魅力的でした」
本作は劇場映画初、無修正で浮世絵春画をスクリーンに映し出すR15+作品であることも話題に。「春画というと、恥ずかしいと感じる人も多いと思います。でも今回、春画の歴史などを勉強すると、感動することだらけなんです。喜多川歌麿や葛飾北斎など、名だたる浮世絵界のスーパースターたちが裏で描いてきた作品なので、そのクオリティの高さはもちろんですが、印刷の技術力や彩りもものすごくハイレベル。そして、見れば見るほど作品から生命力を感じるというか、ものすごいパワーを感じるわけです。禁止されてもなお裏で描かれ続けた春画に、雑草魂に似たものを感じますし、生きる者への応援歌ではないかなと」
実際に武士たちは縁起ものとして鎧の中に春画を仕込んで戦地へと向かったのだとか。
「そうなんです。やっぱり戦いの場で瀕死の状態になったときに、最後の力を奮い立たせてくれるのはそういった生への執着力かもしれないなぁと。それに春画は母親が嫁ぐ娘に持たせたとも言われているんです。セックスが怖いものではないと教える意味もあったでしょうし、夫婦円満のお守りとしての役割もあったと思います。僕も今回初めて知ったのですが、春画は平和をもたらすものだったんですよね。春画は「笑い絵」と呼ばれるくらい、男同士で見ても女同士で見ても、みな一様に心おおらかになるものだったんだと。今までとはまったく違った印象を持つことができて目からウロコでした」
つまらない毎日を送っていた弓子が春画先生に出会うことで春画の世界にハマり、毎日が充実していく様がまぶしく映る人も多いはず。
「僕もまったりと日常に埋もれてしまう瞬間はあります。そんなときは、ふらっと美術館に入ってみたり、突如として変な演劇を観たりします。そうすると、思ってもみなかったものがアンテナに引っかかって、退屈していた頭を揺さぶってくれたりするんです。だから、普段やらないことをあえてやってみるのもいいかもしれない。いつもと違う道を歩いたら、『春画先生』のポスターに出会って、春画にのめり込むきかっけになるかもしれませんよ(笑)」
『春画先生』
原作・監督・脚本/塩田明彦
出演/内野聖陽、北香那、柄本佑、
白川和子、安達祐実 他
公開/10月13日(金)全国ロードショー
PHOTO / Isamu Ebisawa
STYLIST / Kan Nakagawara (CaNN)
HAIR & MAKE / Yuko Sato (studio AD)
TEXT / Satoko Nemoto
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