【現場レポ】綾野剛「ハゲタカ」クランクアップで目を潤ませる 「本番前にずるい」撮影中に見せた共演者との姿・記者への気遣い
2018.08.22 07:00
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俳優の綾野剛が都内にて、主演をつとめるテレビ朝日系ドラマ「ハゲタカ」(毎週木曜よる9時~)のクランクアップを迎えた。現場の様子をレポートする。
綾野剛「ハゲタカ」クランクアップのシーンは
今作は2004年に真山仁氏が発表した傑作小説『ハゲタカ』を、テレビ朝日連続ドラマ初主演となる綾野で連続ドラマ化。激動の時代を背景に、外資系投資ファンドを率いる“企業買収者”鷲津政彦(綾野剛)の生き様を鮮烈に、そして爽快に描いていく。腐りきった日本の組織のトップを痛快に叩きのめし、そして甦らせる…平成という時代に幕が下りる目前に、誰もが待ち望んでいたダークヒーローが誕生した。ラストの撮影シーンは、最終話(第8話)の小林薫演じる元三葉銀行常務取締役で鷲津によって失脚させられた飯島亮介と対峙する重要なシーン。
テスト撮影前には小林の話に真剣な表情で耳を傾ける綾野の姿が。身振り手振りも混じえ、2人の会話は白熱していく。撮影ギリギリまでスタッフと動きを確認し、鋭い視線でモニターをチェックしていた。
綾野剛クランクアップで涙目に
最後のカットがOKとなり、「綾野剛さんクランクアップです!」の声があがると、自分に向けられた拍手を返すように真っ先にスタッフに向けて大きな拍手を送る。小林から花束を受け取ると、笑顔を見せ目を潤ませ、言葉を詰まらせながら思いをゆっくりと話した。「最後は非常な重要なシーンだったので…何を考えても感謝しか出てこないです。鷲津政彦という人に出会えたことが感謝ですし、出会わせてくれた皆さんにも感謝です。最後まで生き抜く姿を見届けてもらえたのがなにより。それしかない。役者やっていてよかったです。彼から教わった沢山尊敬できる部分を糧にまた生きていきたいと思っています。また、必ず皆さんとやりたいです。今までで一番楽しかったです。やってきてよかったです」。
率直な現在の心境を聞かれると、「鷲津っていう人が常に次しか見てないので、本当に嘘なしで終わってない。全然疲労感もないですし、全く終わらせられない感じなんですよね」と吐露。「8話で最後のシーンだったんですけど別れた瞬間には次を見ているし、現在に身をおいたと思ったらもう次の未来に足を踏み入れている。休むこと知らないって言ってしまったらそんな簡単な言葉じゃない気がするんですけど、ある種の使命感のようなものを彼には感じているので、クランクアップという感覚がなさすぎてこういう経験は初めてですね。僕が役になりきっていたとかそういうことじゃなくて、終わり方が分からない。原作もそうだし、元々持っている鷲津っていう人が生き続けようとする人なんだなってことが改めて分かりました」と新鮮な経験であることを明かした。
綾野剛、鷲津政彦の21年間を演じきる
渡部篤郎、沢尻エリカ、光石研、杉本哲太、小林といった実力派俳優が集結。第7話(30日放送)と第8話(9月6日放送)には、4人組ダンスボーカルユニット・PrizmaX(プリズマックス)メンバーの森崎ウィンも登場する。約3ヶ月の撮影を通じて、特に印象に残った出来事を聞かれた綾野は、「数々のベテランから若手まで僕も含めて色んなタイプの方々と1つの作品を通して向き合えたことは役者冥利につきますし、何より皆さんが気持ち良い顔して、帰られていく姿を見てまた戻ってくる感じがするんですよね。それは企業を変えてか分からないんですけど誰1人生きることを諦めた人が1人もいない、そういう姿勢をキャストの皆様からものすごく体感させられたし、その体感が自分の実感に繋がっているので、そういった実感を踏みしめて前に歩かなきゃいけないなと思ったんです。色んな人の屍の上に立っていると思っているので、その人たちの分もっていうことじゃなく屍の上に立つ分軸足がしっかりしていなきゃっていう意識が強いんでしょうね。だからそれを他の共演者、ゲストの方からもすごく感じました」と共演陣との演技を通じて、鷲津を演じる上での意識も変わったよう。
1997年から2018年という約21年間を演じきり、「とても生き甲斐のある人でしたよ」と語る表情は晴れやかだった。
ラストの撮影で小林薫が伝えたこと「本番前にずるいなあ」
ラストの撮影の合間で、小林からは“飯島”というキャラクターの独白を聞いたという。「薫さんとは今まで何度も共演させて頂いて、息子役をやったりとかどちらかというと子供扱いされる役が多かったので、それも心地よかったですし、胸を借りていればいいですから。自分の役に対してこう思ってるんだっていう独白を1回も聞いたことがなかったんですけど、それをお話してくださって」と初めて小林が役に込めている思いを伝えてくれたと明かし、「それを聞くことによって、長い年月の中で、単純に今まで僕のことを見てきてくれた、1つ男としてちょっとでも見てくれたことによって独白までさせてくれる関係性にたどり着けたのかなと思えたら『本番前にずるいなあ』と思いました」と大先輩の行動に感激した実感を語り、頬を緩ませた。綾野剛「ハゲタカ」で「改めて自分の血や肉を形成された」
そして、最後に視聴者に向けてメッセージを求められると、「なにをどうこういっても結論希望なんですよね。『この国には怒りが足らない』ってところからスタートしているんですけど、やっぱり希望だなって思います。彼を通して感心させられたことがあって、世直しみたいな感じになってますけど冷静に考えたら自分たちにも置き換えられることが沢山ある。何よりも“ゴールデンイーグル“という異名を鷲津さんは与えられてますけど、僕は最後の最後まで“ゴールデンイーグル”ではなく“ハゲタカ”として生きようとしたことが分かりました。希望なのだとしたらそれは僕ではなかった気がしますね。先を思っている別の誰かなんだろうなと」と劇中で登場する未来を見据える若者へ希望を託したコメント。ドラマのラストは「日本VS鷲津」というスケールになっているといい、「ドラマというメディアを最大限に活かして一人でも多くの人に信念を見せるっていうことがこの組はできているって思います。それを体感しました」と作品に自信。「テレビ朝日の木曜9時枠という大変勢いのある枠で彼を生きられたことは自分にとって誇りですし、改めて自分の血や肉を形成された感じがします」と役者人生にとって大事な作品になったことを改めて強調し、充実感に満ちた表情で語った。
「僕が役になりきっていたとかそういうことじゃなくて」と口にした綾野だが、とめどなく溢れる言葉は、まるで鷲津本人から発せられているような熱の込もったもの。いかに綾野が役に没入していたか、“綾野剛”という役者の役に対するまっすぐな姿勢が垣間見れた。
飾らない綾野剛…記者に見せた数々の気遣い
クランクイン時も気遣いを忘れない綾野の姿が印象的だったが、その姿は今回も変わらず。挨拶を終え、囲み取材のタイミングになると、「ありがとうございます、来て頂いて」「すみません、長い時間、挨拶もまともにできずに」と記者に挨拶すると、その場にしゃがみこんだ綾野。椅子を持ってこようとするスタッフを「大丈夫です」と制し、そのまま記者と同じ目線に立って取材に応じ、周りのスタッフからは「こんなの見たことない」と驚きの声があがった。一通り取材が終わると「足、痛くないですか?俺ちょっと痛いんだけど(笑)」と茶目っ気たっぷり。長時間の撮影を終え、一番疲れているはずであろうに、最後には周りに置かれたテープレコーダーを自ら拾って記者に返す神対応ぶりで、記者をほっこりとさせてくれた。(modelpress編集部)
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