「東京ラブストーリー」伊藤健太郎、石橋静河(C)フジテレビ

令和版「東京ラブストーリー」平成版とは別物として楽しめる魅力解説 スマホ世代でもすれ違う恋愛

2020.05.31 17:42

29年ぶりにドラマ化され、フジテレビが運営する動画配信サービス「FOD」とAmazon Prime Videoにて配信中のドラマ「東京ラブストーリー」(毎週水曜日0時最新話配信)にじわじわとハマる人が続出。平成版と比較して令和版の魅力を解説する。

  

伊藤健太郎×石橋静河×清原翔×石井杏奈で令和版「東京ラブストーリー」

原作は1988年より「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)にて連載された柴門ふみ氏の漫画で、1991年にフジテレビで放送されたドラマは“カンチ”こと永尾完治と赤名リカのせつないラブストーリーが当時社会現象となり、その後も語り継がれる90年代恋愛ドラマの金字塔ともいえる不朽の名作に。今回、29年ぶりに現代版としてよみがえった。

完治を伊藤健太郎、リカを石橋静河、完治の同級生で女たらしの医学生・三上健一を清原翔、同じく完治の同級生で完治が想いを寄せている関口さとみをE-girls石井杏奈が演じている。

令和版「東京ラブストーリー」は平成版よりも原作に忠実?

石橋静河、伊藤健太郎(C)フジテレビ
どうしても平成版のドラマの印象が強い作品だが、令和版は平成版の設定にとらわれず、大胆に設定を現代に寄せた。

まず、平成版ではリカの目線が中心だったが、令和版では原作と同じように完治目線に。

平成版では完治とリカはスポーツ用品メーカーの同僚で、事業部所属のリカが中途採用で愛媛から上京してきた営業部所属の完治を空港まで迎えに行くのが出会い。同僚ではあるが違う部署のため一緒に働くシーンはその後あまり描かれず、オフィス内の倉庫で話し合いをするシーンが多々登場し、どちらかと言えばリカが公私混同をして完治を困らせる姿が印象的だった。ドラマあるあるではあるが、正直平成初期生まれの記者からすると「仕事して!」とツッコミが止まらないのはもちろん、こんな会社にオープンな交際で良いのかハラハラさせられた。

令和版では2人の勤務先を原作と同じ広告代理店に設定。だだっ広いフロア、オシャレなカフェテリア、自由な服装と、現代的なオフィスを駆け回るリカは仕事をバリバリとこなす女性。愛媛支部から東京本社に異動となり上京してきた完治はしばらく“赤名さん”呼びが抜けず、リカが完治の仕事の面倒を見て案件を回すなど、序盤は2人の間に上司と部下のような上下関係が感じられた。カフェテリアで仕事の打ち合わせの延長線上でデートの約束をしたり、連絡をとりながらデスク越しに目を合わせたりと控えめなオフィスラブの描写もすんなりと入ってきた。

より強く自立した女性として描かれる令和版リカ

伊藤健太郎(C)フジテレビ
石橋静河(C)フジテレビ
また、帰国子女だったリカの設定は東京都渋谷区出身、幼稚園からエスカレーター式の私立校出身で大学まで進学した生粋の東京人に。上京してきた完治にとってリカは“東京“そのものとして象徴的に描かれる。

長期休暇には一人でアメリカ旅行へ行き、デザイナーとのつながりを作るなど、プランナーとして類まれな実力の持ち主。そんなリカに完治は尊敬の思いと距離を感じながらも愛情を育てるのだが…。

鈴木保奈美が演じる平成版のリカもはっきりした性格で、天真爛漫で自由奔放な部分が魅力的だったが、完治を愛するあまりにわざと困らせたり、完治とさとみの関係を疑っているのにも関わらず試すような質問をして気にしていない素振りを演じたり、今で言う“こじらせている女性”という印象も強く、「そんなめんどくさいことばかりしていたらそれは完治も嫌になるよ…」とつい思ってしまった。

令和版のリカは自立していて、完治に相談せずに大事なことを決めるような女性。自分の信念の元に行動しているが、完治には理解できないことも多く、その度に衝突して振り回される。

リカという女性の唯一無二の魅力は時を経ても変わらないが、鈴木が作り上げた強烈なヒロインだった平成版に比べ、石橋が演じる令和版のリカの方が、共感できる女性は多いのではないだろうか。

「東京ラブストーリー」29年ぶりドラマ化(左から)伊藤健太郎、石橋静河、石井杏奈、清原翔(C)フジテレビ
相手を自分のものにしたい完治と誰のものにもなりたくないリカ、強い独占欲を内に秘め自分のものになかなかならない三上との恋愛に苦しむさとみと大切な人を大切にできない三上、4人の関係性は次第にバランスを崩していく。

東京ラブストーリー、スマホが発達してもすれ違う恋愛

石橋静河、伊藤健太郎(C)フジテレビ
そして、やはり注目したいのが、連絡手段の違い。固定電話と公衆電話が一般的な連絡手段だった平成版では、連絡の来ない相手を延々と待ち合わせ場所で待ったり、さとみからの留守電を完治の部屋でリカが聞いてしまったり…電話が象徴的なすれ違いの描写として使用された。

令和版ではLINE、Instagramなどを彷彿とさせるシーンが多々登場。さとみが三上の同級生の長崎尚子(高田里穂)をSNSで検索するシーンはさとみの執念深さがよく表現され、完治がスマートウォッチでリカからの電話を受けながらもさとみを抱きしめるシーンはその変わらない優柔不断なずるさが秀逸に描かれていた。

リカからの毎日のテレビ電話に疲れた完治が仕事をしながらリカの電話を流し聞いている場面も興味深く、顔が見えることで逆に相手の気持ちがダイレクトに伝わるようになったかもしれない。しかし、三上の「こいつ(スマートフォン)がどれだけ進化しようが、こいつじゃリカのこと抱きしめらんないだろ」というセリフの通り、いくら文明が発達しても縮められない距離はあるしすれ違いは起こってしまうのだ。

令和版が迎える結末は…

最後に配信ドラマだからこそ描ける丁寧なストーリー展開に触れたい。明確な記述は避けるが、終盤の展開は平成版と大きく異なり、より1つ1つの出来事に時間をかけ、キャラクターの心情変化にも納得が行きやすい説明をしっかりと補足しているように感じた。

第10話では、平成版ではなかった衝撃的な事実が発覚。残すは6月3日に配信される第11話となり、結末に注目が集まっている。(modelpress編集部)
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